研究課題/領域番号 |
26610139
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
今西 祐一 東京大学, 地震研究所, 准教授 (30260516)
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研究分担者 |
高森 昭光 東京大学, 地震研究所, 助教 (00372425)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 磁気浮上 / 重力計 |
研究実績の概要 |
平成26年度は,反磁性体による磁気浮上の理論的側面についての展開を行った.磁場のポテンシャルを平衡点のまわりに展開し,係数の満たすべき条件などを調べた.磁気浮上による重力計としてはすでに超伝導重力計があり,その特性を理解することは本研究にとっても役に立つと考えられたので,国内3ヶ所(長野県松代,岐阜県神岡,沖縄県石垣)に設置されている超伝導重力計の記録を調べ,装置の傾斜(水平加速度に相当)と重力記録との関係などを詳細に分析した.その結果,沖縄県石垣の超伝導重力計に関して,興味深い事実がわかった.この観測点は石垣島という海洋島に位置しており,台風や前線の通過時などには波浪ノイズのレベルが非常に高くなるが,そのようなときに,ノイズレベルが上昇するだけでなく,重力が増加するのである.この原因を調べるため,重力計の近傍に地震計を配置して地動ノイズと重力との関係を詳細に分析したところ,水平成分のノイズレベルと見かけの重力変化とがほぼ比例することがわかった.こうした効果は,石垣島のような海洋の波浪ノイズが大きい場所で顕在化するものであり,南極やアラスカなど世界の超伝導重力計観測点のいくつかにおいても現れている可能性があるが,まだ報告されたことはない.この効果は磁場のポテンシャルに高次の項を導入することによって説明できることがわかり,上下成分と水平成分とのクロストークの存在を示している.これは,テストマスが上下方向に拘束されていない磁気浮上メカニズムに特有の効果であり,本研究におけるセンサーのデザインにおいても慎重に考慮すべき要素であると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初,磁気浮上のデザインをソフトウエアによるシミュレーションで行うことを予定していたが,それを行う前に超伝導重力計という非常に良いアナログ装置の分析から始めることにした.その結果,上下成分と水平成分とのクロストークの存在が明らかになり,その対策としてフィードバック回路に変更を加えて感度を加えるなどのテストを行った.この分析とテストには非常に長い時間を要した.こうしたことは本研究にも直接応用がきくことではあったが,当初予定外であり,本研究のプランの進行を遅らせることともなった.
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今後の研究の推進方策 |
1年ほど遅れることになったが,平成27年度は当初予定のシミュレーションを実施する.磁気浮上型センサーとしては,単に磁気浮上力を発生させたり,力の勾配を弱くすることだけではなく,ポテンシャルの高次項に起因するクロストークを抑制することが重要であることがわかったので,とくにその点について留意して装置デザインを行う.シミュレーションに加えて,実機の試作も並行して進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度はシミュレーションを実施しなかったので,そのためのソフトウエアを購入しなかった.また,材料などの吟味にも時間を要したため調達するに至らなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
当初の予定に沿って,シミュレーションのためのソフトウエアや製作のための材料などを平成27年度に導入し使用する.
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