本研究の目的は,地殻のような差応力のある場において,地震波速度や比抵抗にどのような異方性が生じるかを理解することである。”応力状態―流体分布―物性の異方性”の関係を解明するため,細粒黒雲母花崗岩(庵治花崗岩)を試料として岩石実験を進めてきた。 1.最終年度(平成28年度)に実施した研究の成果 (1)一軸圧縮下での乾燥岩石の弾性波速度測定: 立方体試料(辺長25 mm)に一軸圧縮(最大軸圧:20 MPa)を加えながら,直交する3方向の弾性波速度を測定し,圧縮軸方向に進行するP波速度,圧縮軸方向に進行または振動するS波の速度が圧縮に伴って選択的に増加することが分かった。弾性波速度からクラック密度テンソルを求め,圧縮軸に垂直なクラックが選択的に閉じていくことを定量的に示した。 (2)一軸圧縮下での含水岩石の電気伝導度測定: 一軸圧縮を加えながら電気伝導度を測定するためのエンドピースを開発し,含水岩石の電気伝導度を測定した。一軸圧縮に伴う電気伝導度の変化は,圧縮軸に平行な方向でも垂直な方向でも大きな差はなかった。これはどちらの方向の電気伝導においても,様々な向きのクラックが伝導経路を構成しているためと考えられる。 2.研究期間全体を通じて実施した研究の成果:(1)X線CTおよびBIB-SEMによる微細構造観察により,庵治花崗岩内に存在するクラックのほとんどは開いた粒界であることが分かった。(2)一軸圧縮を加えながら含水岩石の電気伝導度を測定する方法を確立した。(3)一軸圧縮により圧縮軸に垂直なクラックが選択的に閉じる。これによって地震波速度には顕著な異方性が生じるが,電気伝導度にはほとんど異方性が生じないことが分かった。これはどの方向の伝導経路も様々な向きのクラックによって構成されているためと考えられる。
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