研究課題
地球型惑星の中心核形成過程は、固体マントルと鉄合金融体との分離様式が形成過程に大きく影響する。密度の大きい鉄合金が軽い固体マントル上に溜まり重力不安定によって分離するプロセスが核形成の主要な分離過程として提唱されてきた。しかし実際の鉄合金を用いた実験報告例は皆無で、このメカニズムの実験的な検証が必要とされてきた。そこで本研究では、大型レーザーを用い試料加速により重力を付加し、レイリー・テイラー型重力不安定による鉄合金試料の表面擾乱の変化の観察を目的とした。さらに試料表面の擾乱成長速度を求め、地球核形成シナリオ及びタイムスケールに対する指標を得ることを目指す。26年度は、鉄試料を用いた実験を行い、実験条件および手法の最適化を実施した。実験手法:大型の激光XII号レーザ-を使って試料加速により鉄試料に重力を付加し、重力不安定による試料表面擾乱変化の観察を行った。試料にはYAGレーザーで縞状の初期擾乱加工を施した。付加される重力方向(レーザー照射方向)と同じ向きからX線ストリークカメラを用いて透過X線による測定を行い、透過X線強度変化から擾乱振幅の時間変化を求めた。結果:鉄試料の測定条件の最適化を実施した後、鉄試料と鉄表面に珪酸塩膜を付加した試料の2種の試料を用いた。この結果、得られた試料の透過X線画像から擾乱の試料厚み変化に対応する明瞭な縞状のコントラストを確認できた。このX線透過強度比の時間変化を調べることで、擾乱形状変化を評価した。鉄試料については、X線透過強度比が時間と共に単調に増加し、擾乱が時間と共に成長する傾向が見られた。更に鉄の表面擾乱上に珪酸塩膜を施した試料では擾乱成長が抑えられていることがわかった。以上の結果から、本課題の測定によって鉄試料については高温高圧下での重力不安定による擾乱成長を観察することが可能となり、珪酸塩膜の効果も調べることができた。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた計画通り、今年度は計測機器・実験条件の最適化を行い、鉄試料を用いた重力不安定性の観察を実施して擾乱成長を観察することができたため。具体的に測定の最適化については、鉄試料の表面擾乱成長観察のために、複数のドライブレーザー及び観測用X線発生レーザーに遅延をかけ、測定時間を延ばす工夫を行った。また試料の初期擾乱振幅を数種類準備し、その初期振幅の違いによる影響も評価した。測定方法についても、試料側面からの観測とドライブレーザーと同じ方向からの2方向からの測定をX線ストリークカメラとフレーミングカメラを用いてそれぞれ実施し、擾乱観察の評価を行った。結果として、概要に記述した手法が最適であると判断した。測定結果については、鉄試料については高温高圧下での重力不安定による擾乱成長を観察することが可能となり、珪酸塩膜の効果も調べることができた。
27年度は、26年度に最適化したX線ストリークカメラを用いた透過X線による測定から、Fe-SiやFe-Cといった鉄-軽元素試料を用いて、これらの試料表面の重力不安定による擾乱成長を観察する。得られた結果から、中心核に実際に含まれる軽元素(Si、C)の重力不安定性の成長率に与える効果を明らかにする。また鉄合金試料表面に蒸着する珪酸塩膜の厚みも変化させて、珪酸塩層の擾乱成長率に与える効果をより定量的に評価する。以上より、得られた重力不安定による擾乱成長率から、スケーリングを考慮し様々な核組成に対応する核形成タイムスケールを推定していく。
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