研究課題/領域番号 |
26610142
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐藤 雅彦 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 研究員 (50723277)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 古地磁気強度 / ジルコン / 岩石磁気 / 長江 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、ジルコン単結晶を用いた古地磁気強度実験手法の確立、古地磁気実験用試料の採取を目的として、(1)丹沢で採取したジルコン試料の磁気測定、(2)長江河口での川砂サンプリングを実施した。具体的内容は以下の通りである。 (1)丹沢で採取したジルコン試料の磁気測定 神奈川県丹沢山地中川で採取した川砂ジルコン試料約1000粒子を用いて、自然残留磁化測定、等温残留磁化測定、低温消磁・段階交流消磁測定、磁気ヒステリシス測定、低温磁化測定、熱残留磁化測定を行った。測定の結果、ジルコン単結晶の磁化はSQUID磁力計、磁場勾配磁力計、磁気特性測定装置で測定可能であることが明らかになった。また岩石磁気パラメータを用いて2つのグループに分類可能である事、一方のグループでは古地磁気強度実験に適した性質を示すことが明らかになった。 (2)長江河口での川砂サンプリング 平成26年11月に中華人民共和国上海市の長江河口において川砂サンプリングを行った。長江河口では、約10億年前までのジルコン試料を重点的に採取することができる。採取したジルコン試料を用いて古地磁気強度実験を行うことで、過去10億年間の古地磁気強度変化データを重点的に得られると期待される。採取したジルコン試料を用いて予察的な測定(自然残留磁化測定、低温消磁・段階交流消磁測定、U-Pb年代測定)を行った。U-Pb年代測定の結果、採取したジルコン試料は幅広い年代分布を示す事が分かり、本研究の目的に適した試料である事が確認できた。また磁気測定の結果、丹沢試料と同様にジルコン単結晶の磁化はSQUID磁力計で測定可能であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)古地磁気強度実験用の試料採取 平成26年度に中華人民共和国上海市の長江河口で採取したジルコンを用いる事で過去10億年間の古地磁気強度変化データを重点的に得られると期待される。また平成26年度2月にアメリカ合衆国ルイジアナ州のミシシッピ川河口で採取したジルコンを用いる事で10億年前から30億年前の期間の古地磁気強度変化データを重点的に得られると期待される。2つの試料から得られるデータを合わせる事で、地球史を通じた古地磁気強度変化データが得られると考えられ、本研究の目的を達成するために必要な試料の採取はほぼ完了したと考えられる。 (2)ジルコン単結晶を用いた磁気測定手法の確立 ジルコン単結晶を用いた古地磁気強度実験を行うためには、微弱なジルコン単結晶の磁化を測定する手法を確立する必要がある。平成26年度に実施した丹沢のジルコン試料を用いた実験により、各種の磁気測定手法及び磁気パラメータを用いた試料の分類手法の確立に成功した。 (3)ジルコン単結晶を用いた古地磁気強度実験の推進 地球史を通じた古地磁気強度変化データを得るためには、長江及びミシシッピ川で採取したジルコン試料の磁気測定・年代測定を行う必要がある。平成26年度には、長江のジルコン試料を用いて予察的な磁気測定・年代測定を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、地球史を通じた古地磁気強度変化データを得る事を目的として、長江及びミシシッピ川で採取したジルコン試料の磁気測定・年代測定を行う。予定している実施項目は以下の通りである。 (1)古地磁気強度実験手法の確立:試料ごとに含まれる磁性鉱物の組成・粒径・種類などが異なるため、それぞれの試料に適した古地磁気強度実験手法を適用する必要がある。長江及びミシシッピ川で採取したジルコン試料の岩石磁気測定を行い、その結果に基づき最適な古地磁気強度実験手法を選択し実行する。 (2)強磁化試料選別用の装置開発:地球史を通じた古地磁気強度変化データを得るためには大量の試料を測定する必要がある。古地磁気強度実験に先立って、強磁化試料選別を行う事で実験を効率化できると期待される。各種の小型磁気センサーを用いて、強磁化試料選別用の装置開発を行う。 (3)年代測定手法の確立:古地磁気強度変化データを得るためには、古地磁気強度実験を行ったジルコン試料を用いて年代測定を行う必要がある。ジルコン及びインクルージョンを用いた年代測定手法の確立を目指す。また信頼度の高い古地磁気強度データを選別するために、ジルコン中に含まれるインクルージョンの詳細分析を行う事でジルコン結晶の経験した熱履歴を明らかにする。
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