研究課題/領域番号 |
26610145
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
臼井 洋一 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球深部ダイナミクス研究分野, 研究員 (20609862)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 試料振動磁力計 / MIセンサ / 古地磁気学 |
研究実績の概要 |
本研究は高温試料振動型磁力計を作成し、高時間解像度の古地磁気記録の取得から新たな古地磁気学の開拓を目指すものである。本年度は磁力計の基本的なコンポーネントである試料振動機構とMIセンサを用いた磁気測定回路を作成した。振動機構については、従来計画であったボールねじは摩耗により長期間の使用が難しい可能性があることがわかったので、代替としてリニアモーターとスコッチクランクを比較検討し、電磁ノイズの少なさからスコッチクランクを採用した。樹脂製のスコッチクランクでは、1.5cm, 5Hz程度の振動が可能であった。合わせて樹脂製のサンプルホルダーを作成し、アルミ製のフレームと組合わせ非磁性の振動機構を作成した。MIセンサとしてはアイチ・マイクロ・インテリジェンス社製のMI-CB-1DHを用いた。振動機構・センサーを手持ちのパーマロイ製の磁気シールドケースと組み合わせた実験により、特にシグナル処理をしない段階で、磁化がおよそ1μAm2の玄武岩試料の磁気シグナルを明瞭に捉えられることがわかった。 試料加熱によるセンサ温度上昇の程度を調べるために、磁気シールド内の試料を赤外線導入加熱装置により加熱し、試料から5cm程度の空間の温度を測定した。アルミ板による簡易的な熱シールドを用いるだけでも、直径2cmのSiC円柱を加熱対象とした場合に、試料を600度まで加熱した時点での温度上昇は10度程度に抑えられることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は常温磁力計を開発することを目指した。磁力計の基本的なコンポーネントである試料振動機構とMIセンサを用いた磁気測定回路を試作し、常温の残留磁化測定の基本的なテストを行った。樹脂製のスコッチクランクを採用することで、最小限の電磁ノイズで長寿命の振動機構を作成し、MIセンサと磁気シールドを組み合わせることで地質試料の磁化が確かに測定可能であることがわかった。また、直径の小さなSiC円柱をチャンバーとすることで、試料周辺の温度上昇が抑えられることがわかった。これはセンサ距離を近づけ高感度な磁気測定を行う上で重要である。一方でシグナル処理の開発が遅れており感度が目標には達しておらず、磁化三成分の測定も行えていない。
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今後の研究の推進方策 |
来年度に予定通り連続熱消磁装置を完成させ、試験的な測定を行う。そのために、類似の機器を開発中である有限会社ヤキルスと連携し、MIセンサによる磁化測定の感度の向上と磁化三成分の測定を早急に可能とする。平行して申請者は試料加熱部分と熱シールドを作成し、統合して連続熱消磁装置を完成させる。 装置が完成次第、ヘマタイトとカマサイトを用いた高温磁化測定を行い、特に静磁的相互作用が熱残留磁化の固定に与える影響を評価する。その後にミランコビッチ周期を持つ堆積岩層を対象に実際の古地磁気試料を採取し、連続熱消磁装置による測定を行い、古地磁気強度と古地磁気方位の時間スペクトルの復元を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
磁力計がまだ試作段階であるため、当初予定していた磁気シールドを次年度に購入することとし、手持ちのパーマロイ磁気シールドを用いたため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
高温磁力計の完成に向け、専用の磁気シールドを設計・購入するために使用する。
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