本研究では、湿性沈着の水溶性エアロゾル組成という環境汚染や地球温暖化の解釈に重要で、かつ新しい環境指標を抽出して、エアロゾルの沈着メカニズムを再評価することを目的とする。 平成27年4月から、開発済みの雪昇華装置を利用して、採取した降雪を昇華し降雪中の固体微粒子を抽出した。具体的には、エアーコンプレッサー、エアードライヤーを用いて露点温度の低い乾燥空気を作り出し、乾燥空気を強制的にフィルター上の降雪に送り込み、水溶性エアロゾル微粒子が固体で存在する-50℃以下の低温状態で雪や揮発性物質を昇華蒸発させた。平成27年度内に予定していた7試料の不揮発性粒子の抽出を終了した。 平成27年4月から、抽出された不揮発性粒子の元素組成を分析した。また、降雪と同時期に採取したエアロゾルの元素組成を分析した。その結果、降雪中の微粒子には塩化物塩が多く含んでいることが明らかとなった。他方、ダイヤモンドダストやエアロゾル中には塩化物塩はほとんど含まれておらず硫酸カルシウムなどの陸域を推測させるエアロゾルが多く存在していた。 本研究により、エアロゾルと降雪中の微粒子という空間的に同じ大気中に存在するものではあるが、その組成が大きく異なっていることが明らかとなった。降雪中の塩化物塩は日本海などの海塩を起源としていると考えられる。北海道内陸のトマムまで雪粒とともに海塩が輸送されていることを示唆する。他方で、トマムのエアロゾル中には海塩が存在していない。
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