研究課題/領域番号 |
26610148
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
須賀 利雄 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70211977)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | サブメソスケール擾乱 / 中規模渦 / プロファイリングフロート / スパイシネス / 国際情報交換 / 渦度場・歪場 / 3次元カスケード / 高鉛直波数構造 |
研究実績の概要 |
昨年度開発した、黒潮親潮混合水域の単一の高気圧性渦の集中観測時の鉛直プロファイルデータからサブメソスケール擾乱に伴う貫入構造を検出する手法を、Klein et al. (1998)の3次元カスケードの理論に基づき改良し、黒潮・親潮およびその周辺海域のArgoフロートデータへの展開に適した手法を確立した。具体的には、中規模渦の周囲などの歪場で発達するフィラメント構造は、3次元カスケードにより水平的だけでなく鉛直的にも小さな構造をもつというKlein et al.の結果を踏まえ、鋭い貫入を多数含むプロファイルを、鉛直的に高波数の構造を伴うサブメソスケール擾乱を捉えたプロファイルとして検出する手法を開発した。 この手法を親潮周辺域(140°-160°E, 38°-45°N;全6167プロファイル)、黒潮続流北方海域(140°-160°E, 35°-38°N;全4110プロファイル)、黒潮続流南方海域(135°-160°E, 30°-35°N;全10340プロファイル)における2001~2011年の全てのArgoプロファイルデータに適用し、サブメソスケール擾乱の空間分布特性を調べた。とくに、既往の数値実験研究が示しているサブメソスケール擾乱に分布と渦度場・歪場との関係を、本研究で検出した高鉛直波数構造をもつプロファイルの分布を用いて検証した。その結果、解析海域全体で、高鉛直波数をもつプロファイルとして検出されたサブメソスケール擾乱は渦度場に比べて歪場に多く分布することが確認された。さらに、高鉛直波数構造をもつプロファイルを定義する際の閾値パラメータ(スパイシネスの密度による二階微分、および、その極値の個数)に対する、高鉛直波数プロファイルの分布特性が海域によって異なることを示した。この特徴は、サブメソスケール擾乱の空間分布の背景場への依存性を表していると推定される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、本年度には、サブメソスケール擾乱の検出手法を北太平洋の亜寒帯、亜熱帯、熱帯の広範囲への適用を目標としていたが、昨年度の研究の進展を踏まえ、計画の一部を変更し、検出手法を、サブメソスケール擾乱の理論的研究と結び付け改良する取り組みを行った。そのため、北太平洋の広域への適用までには至らなかったが、サブメソスケール擾乱の空間分布の特徴を理論と対比して解釈するための手法を開発し、これを親潮・黒潮およびその周辺海域に適用し、その有効性を確かめることができたことは、変更した計画における大きな進捗といえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度改良したサブメソスケール擾乱検出手法を、できるだけ広い時間、空間範囲に適用し、サブメソスケール擾乱の時空間分布特性の把握と、その成因に解明に取り組む。サブメソスケール擾乱研究を国際的にリードするフランス人研究協力者との議論を継続し、観測から得られた結果の理論的な裏付けを並行して進めつつ、3年間の成果をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に学生アルバイトによるデータ・解析結果の整理を予定していたが、学生との日程調整がつかず、平成28年度初めに作業の一部を持ち越したことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に実施予定だったデータ・解析整理作業の一部を、平成28年度に予定していた作業と同時に実施する。
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