研究実績の概要 |
海洋深層における中規模変動の特徴とメカニズムを明らかにするため、過去に係留観測が繰り返し実施された本州南東のB点(30N, 147E) において、高解像度の係留観測を実施するとともに過去の係留観測データと高解像度海洋大循環モデルの解析を行った。 高解像度係留観測で捉えられる中規模変動の特性を把握するための予備的解析として、B点付近で1978~85年に行われた9回の係留観測結果とCOCOモデル (Hasumi, 2006)に基づく渦解像の全球海洋大循環モデルの出力データを解析した。その結果、B点付近で東西に100 km 離れた2係留点での深さ5000 m において、45~75日周期の変動が卓越し、モデルでは54日周期が最も卓越した。モデルで54日周期の変動はB点の北100 kmにおいて極大域を示した。この変動が卓越する領域において、見積もられた波数ベクトルと鉛直構造から、地形性順圧ロスビー波であると考えられた。この変動のエネルギー源を調べるため、地形性順圧ロスビー波の群速度を時間積分するレイトレーシングを行い、黒潮続流域がエネルギー源であることを明らかにした。 平成26年5月に9系の係留系を東西南北幅100kmの菱形状に設置し、高解像度係留観測を開始した。9系の内、5系を平成27年10月に回収し、2系を平成28年6月に回収したが、残りの2系は切り離し装置の反応がなく回収を断念した。深さ3,000から6,000 mまでの1,000 m毎で流速の時系列データが得られ、そのデータの品質管理を行った。得られた流速データを解析した結果、170日周期の東西流速変動が卓越していた。見積もられた波数ベクトルと過去の係留観測結果も含めた流速の分散楕円の分布から地形性ロスビー波であると考えられ、そのエネルギーはB点を北東から南西方向に伝播することを明らかにした。
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