研究課題/領域番号 |
26610153
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
河谷 芳雄 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 統合的気候変動予測研究分野, 主任研究員 (00392960)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 海洋前線 / 重力波 / 中層大気 |
研究実績の概要 |
中緯度には海面水温の水平勾配が大きな海洋前線が、海洋上の至る所に存在している。海洋前線が海面近傍の傾圧性の維持及び大気の移動性擾乱の配置を決定し、深い対流を誘発する事で、その影響が対流圏全層にまで及んでいる事が分かってきた。一方、重力波による運動量輸送は、成層圏・中間圏の大規模な温度場・風景場の決定に重要である。移動性擾乱や積雲対流は重力波の主要な励起源である為、海洋前線の影響が対流圏のみに留まらず、重力波を介して遥か上空の中層大気まで影響を及ぼしている可能性が考えられ、その可能性を調べることを目的としている。平成27年度に行った内容は以下のとおりである。 水平解像度T213(約60km)、上部対流圏から中間圏まで鉛直解像度300mに設定した(鉛直256層)気候モデルを用いた。非定常重力波パラメタリゼーションは用いていない。現実的な海面水温分布と、海面水温の勾配を平滑化した2つの実験を行った。平成26年度の初期的な結果として、両者に違いが見られた。平成27年度はその有意性を確かめるためにアンサンブル数を増やし、積分期間を10年にした実験を行った。その結果、中層大気のジェットの年々変動が大きく、海洋前線の有無による影響を上回っており、10年程度の積分では有意な結果が得られないことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海洋前線が中層大気循環に与える影響の可能性を調べる事が本研究の主目的であるが、現時点での結果は、中層大気が持つ年々変動成分に比べて弱い可能性が高いことが分かった。結論を導くための更なる検証段階に入っており、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記述した計画に沿って、中層大気循環場形成における海洋前線の重要性を調べる。中層大気の年々変動が海洋前線が与える影響より大きいことが分かったことを踏まえ、次に下部成層圏の重力波励起の定量的な差について調べることにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の未使用額を含めて、計画通り執行を進めたが、物品等が想定より安価で済んだため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
大規模データ記憶装置等、必要設備の整備を行う。
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