現状の電気伝導度比に基づく塩分測定の問題点を克服し、より不確かさが小さく、定義に基づく塩分測定を実現することを目的として、屈折率測定に基づく絶対塩分計を開発した。現在の海水塩分測定の世界標準である実用塩分計を上回る、世界最高精度の絶対塩分計を目指して、分光干渉原理を用いた世界初の市販のレーザー変位計を利用した。この変位計と測定セルを組み合わせた絶対塩分測定装置を試作し、室温下で24時間(温度変化は21.3~21.8℃)の標準海水の連続測定を行った。空調による約20分周期の温度変化(±0.1℃)に追随して測定値(絶対塩分で±1mg/kg程度)が変化した。変位計の仕様から見積もった絶対塩分の検出可能範囲は6~120g/kg、分解能は0.13mg/kgである。純水の代わりに絶対塩分測定済みの標準海水を基準にすることで、低塩分(6g/kg以下)の試料を測定できる。温度変化を1mK以内に抑えれば、絶対塩分の変化は分解能以下となる。そこで、測定セルに防水加工を施し、恒温水槽内(セル近傍の温度変化は1mK以下)での測定を行った。しかし、光路の一部をガラスにしたことによる受光量減少により、安定した測定値が得られなかった。測定セルを長くする、あるいは、光路の一部を空気とした防水対策が必要である。絶対塩分計は、純水と標準海水により校正する。国家標準にトレーサブルな単結晶シリコンをシンカーに用いた液中ひょう量装置により、純水と標準海水の密度を繰り返し測定した。液中ひょう量(絶対測定法)により求めた密度と状態方程式から計算で求めた密度は両者とも良く一致し(計算値との差は純水が0.0001±0.0019kg/m3、標準海水が0.0000±0.0031kg/m3)、絶対塩分計の校正にこれらが有効であることを確かめた。
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