研究課題
本研究は,フィリピン海プレート北部の四国海盆に分布している可能性のある中新世巨大海底扇状地の全貌を明らかにすることを目的としている.日本周辺には多数の海底扇状地堆積物が存在しているが,それらの規模は大陸のものと比べると一般に極めて小さい.ところが,南海トラフから四国海盆にかけて広がる中新世のタービダイトシステムだけは特異な規模を示していることが,四国海盆地震波探査断面の再検討から明らかになった.この規模の違いがもたらす堆積相への影響が,興味の対象の一つである.今年度は,IODPにより採取されたコア岩相と,陸上に露出している様々な種類の海底扇状地堆積物の比較を行った.まず,九州西部に分布する姫浦層群や北海道東部に分布する根室層群のような前弧海盆チャネル・レビーシステム堆積物の特徴を調査したところ,両者ともに共通して,チャネル下流域に土石流堆積物と解釈可能な微細組織を示す重力流堆積相が集積していることが明らかになった.この特徴は,海底チャネル決壊に伴う土石流の発生として解釈することができる.一方,四国海盆の重力流堆積相の全貌はいまだ解明されていないが,既存のボーリングコアでは土石流堆積物と解釈できる堆積相が特徴的に集積している層準は判別できていない.一つの可能性として,この土石流堆積相のチャネル下流部集積現象は,チャネルの規模に依存しているということが考えられる.ただし,粒子配列の解析結果からは,四国海盆堆積物にも散発的に土石流堆積物が堆積していることが推定されるため,結論を出すためには更なるデータの集積が必要である.
3: やや遅れている
初年度に予定していた堆積相解析ならびに堆積盆ごとの比較研究は順調に推移している.一方で,乗船研究は調査航海が採択されなかったため,十分に進んでいない.
乗船研究は,調査船新青丸の航海日数が大幅に減らされたため,航海採択の見通しが低い.これに対応するため,今後は既存の陸上露頭の堆積相とコア岩相の比較をさらに進めて行きたい.また,既存の地震波探査データを再度解析し,対象とする層準の解像度を上げることで,新たに巨大海底扇状地の分布を把握することを目指したい.
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件)
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