研究課題/領域番号 |
26610164
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
石塚 英男 高知大学, 自然科学系, 教授 (00142349)
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研究分担者 |
小山内 康人 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 教授 (80183771)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 砕屑性ジルコン / テクトニクス / 年代測定 / アジア大陸東縁 / 八重山変成岩 |
研究実績の概要 |
平成26年12月26日-30日に沖縄県石垣島と小浜島に分布する八重山変成岩類と関連する花崗岩類について野外地質調査と試料採取を実施した。調査は現地で車を借り上げて、石垣島3地点、小浜島3地点の計6地点で行った。試料は変成岩類を約40kgと関連する花崗岩類5kgを採取した。 採取した試料は全て通常の岩石薄片を1試料から5枚を作成し、岩石用偏光顕微鏡下で鉱物組み合わせの精密決定を行った。次に、その結果に基づいて年代測定用の試料の選定を行った。年代測定用の試料は通常より厚い岩石研磨薄片を1試料について、2枚作成し、ジルコンの同定を、岩石用偏光顕微鏡、X線顕微鏡、及び紫外線ランプ下で行った。この同定作業は本研究の一番重要な部分なので、特に入念に行った。結果、X線顕微鏡は通常の使用条件では解像度が悪く、解像度を上げるとすると測定時間を大幅に増やさなければならず、実用的でないことが判明した。赤外線ランプ下での同定はジルコンの粒度が小さいと適さないが、ある程度の大きさ(50μm以上)があれば有効であることが判明した。そこで、赤外線ランプ下である程度の情報を得て、最終的に岩石用偏光顕微鏡で薄片内でのジルコンの分布と大きさを決定する方法を採用した。 年代測定は、過去に実施した一部の試料のデータ解析を行ったが、今回採取した新たな試料の分析は、試料選定と分析機器(九州大学のLA-ICP-MS)の調整に手間取ったため、完全には実施出来なかった。ただし、試料の調整は年度末に終了しているので、年度始めに分析を実施する予定である。 その他、本年度は関連する研究者との情報交換(福岡)と関連する研究の発表(横浜、東京、鹿児島、熊本)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の進行状況として、野外地質調査と試料採取については当初の計画どおり順調に進んだ。特に、亜熱帯という厳しい気象状況を考慮した調査時期の選定は適切であった。その後の、試料処理と岩石用偏光顕微鏡による精密薄片記載も順調に進んだ。その結果、当初計画ではH27年度にも八重山変成岩に対する野外調査を予定していたが、その計画は実施しなくても本研究目的が達成出来そうな状況になった。 一方、年代測定の対象となるジルコンの岩石薄片上での同定には、思いのほか時間を費やしてしまった。岩石中のジルコンの粒度は通常多様であるが、岩石を粉砕してジルコンを取り出して、樹脂に埋め込んで、研磨して年代測定するという従来の方法では、最大径のジルコンを選定することが出来るため、分析に適した大きさのジルコンを容易に選定できる。薄片上で分析をする時には、ある薄片面上に分布するジルコンしか分析対象にできないので、その面上に表れたジルコンの分析面が必ずしも最大粒度とはならない。このことが、分析に適した、すなわち、分析に適した大きさの分析面を持つジルコンの分布頻度を悪くし、結果的に、分析数を獲得出来ないことになった。このことが、今回の評価「やや遅れている」の大きな原因である。解決策として、今後は、同じ試料から多数の分析薄片を作成することを考えている。なお、年代測定の分析自体について、問題はない。 その他、本年度は八重山変成岩に関連した変成岩として、長崎県野母半島の変成岩と山口県錦町の文献検索を行い、H27-28年度に実施する野外地質調査の候補地の選定を行った。
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今後の研究の推進方策 |
前年度で八重山変成岩に対する野外調査と試料採取がほぼ終了したので、H27-28年度は長崎県野母半島と山口県錦町の野外地質調査を行い、分布する変成岩類の産状の把握と試料採取を実施する。両地域の具体的な調査地点は前年度に文献検索を行っているので、問題はない。いずれの地域も現地で車を借り上げて調査を実施する。これらのために必要な調査・研究旅費を国内旅費、調査に必要な消耗品費、及び車の借上げ料金をその他の経費として計上した。 採取した試料の岩石薄片を作成して、岩石用偏光顕微鏡で観察と記載を行う。その際、変成鉱物組み合わせの精密解析とジルコンの産状を主眼にして行う。その結果、妥当と判断された試料は、1試料から複数枚の分析用薄片を作成して、年代測定を実施する。なお、前年度に作成した試料は年度始めに優先的に分析を行う予定である。多数枚の分析薄片が必要となったために追加する試料は、同じく、年度始めに分析試料を作成し、分析を実施する。関連して、薄片内でジルコンを効率よく探し出す方法の開発も進める。また、薄片法では十分なデータが得られない事態を想定した岩石粉砕によるジルコンの取り出しと年代測定も実施する。しかし、このことはH28年度になると思われる。これらの試料処理と分析に際して必要となる経費を国内旅費、とその他の経費(分析機器の維持費と消耗品費、役務費)として計上してある。 得られた成果の発表は、関連学会や関連雑誌を利用して、随時、実施する。また、最終年度に向けての報告書の作成を行う。これらのために必要となる経費を旅費とその他の経費(報告書の作成費)として計上してある。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要とする一部の消耗品が購入出来なかった為に次年度使用額(1.699円)が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降で必要とする消耗品を購入する。
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