研究課題/領域番号 |
26610165
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
遠藤 一佳 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80251411)
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研究分担者 |
筒井・石川 牧子 (石川牧子) ヤマザキ学園大学, 動物看護学部, 准教授 (00446577)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 貝類 / 生体色素 / パターン形成 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、貝殻をモデルとして、動物の色彩パターン形成の制御機構の解明を目指して研究を行った。貝殻色素の成分としては、申請者らが昨年度まで注目してきたポリエン化合物(カロテノイドなど)の他に、テトラピロール(ポルフィリンやビリン)やメラニンが報告されている。先行研究では、1950年代に貝殻からポルフィリンの検出が行われており、その後数十年間にわたり研究の少ない時代が続いた後、2000年代からはポリエン化合物の検出が行われている。これら一連の先行研究は、ともにポルフィリンあるいはポリエン化合物が多く検出された種についての記載が主であり、検出の少なかった種についての情報が少ない。しかし先行研究を統合した結果、ポルフィリンは主に古腹足類や頭楯類の貝殻から検出され、それ以外の分類群からは主にポリエン化合物が検出されている傾向が示された。一方、申請者らが今年度まで行ってきた分類群横断的な分光分析の結果を統合すると、多くの貝類種では殻の色にポリエン化合物が重要な役割を果たしているが、古腹足類の多くの種ではポリエン化合物の関与は薄いという結果が得られた。これは古腹足類からのポルフィリンの報告の多さと整合的であった。古腹足類や頭楯類には大型藻類食の種が多く、貝類の食性と代謝が貝殻色素化合物の起源に関与している可能性が示された。また、モノアラガイとともにノックダウン実験等の遺伝子機能解析のモデル生物として想定していたヨーロッパに生息するタマキビガイ科の貝について、黄色と茶の色彩変異を起こす色素がポリエン化合物であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究分担者の実験には外部の設備を利用する必要がある中で、実験を目的とした出張のためのまとまった時間をとることが難しかったため、分子実験とトランスクリプトーム解析のデータ処理の進捗が遅れており、研究年度を1年間延長した。一方で、横断的な解析とデータの統合により、分類群と食性によって貝殻色素の成分が異なるという今後トランスクリプトームのデータ解析に活用できる知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
ポリエン化合物およびポルフィリンの両色素の代謝系に主に着目し、引き続きトランスクリプトーム解析のデータ処理を進める。また、モノアラガイに加え、卵の扱いの容易なタマキビガイ科の貝類について遺伝子ノックダウン/ノックアウト実験を試みる。分光分析やモデルで得られている結果について論文として公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者である石川牧子の実験には外部の設備を利用する必要がある中で、実験を目的とした出張のためのまとまった時間を取ることが困難であったため、予定していた実験を行うことができず、研究期間を1年延長したため。
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次年度使用額の使用計画 |
予定していたトランスクリプトーム解析や遺伝子機能解析の実験を遂行するために使用する計画である。
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