研究課題
第四紀日本海深海堆積物は、cm~mスケールの明暗の互層で特徴付けられ、深層水の酸化還元度の変化を反映している。そこで、その変動の程度や様式の概要をつかみ、セリウム同位体分析に最適な試料を選択するため、多田(代表者)とその指導学生は、高知コアセンターにおいてIODP Exp. 346で掘削されたコアのXRFスキャナによる元素分析を行い、水深1900m付近における過去の酸化還元変動の様子を復元した。このデータを下に、高橋(分担者)は約50試料を選び、酸溶解処理を行い、高知コアセンターにおいて中田(分担者)の指導の下、ICP-MSを用いて微量元素成分の定量分析を行った。分析の結果、過去15万年間の日本海の深海堆積物のなかで、還元環境の発達を示すモリブデンの濃度が増加する層準を複数見出した。なお、セリウムの安定同位体比が変動すると見込まれた酸化的明色層と還元的暗色層の間ではセリウム異常の値が安定して1に近い値(0.9-1.1)を示し大きな差はみられなかった。この1に近い値はセリウムが還元された溶解しやすい三価の状態として挙動した証拠であり、今回分析した試料は、セリウムにより検出しうる酸化還元環境範囲の中ではもっとも還元的な状態を経験したものであるということがいえる。高橋はまた、海洋研究開発機構の調査船かいれいによる日本海南部航海(KR15-10:2015年6月30日-7月10日)に乗船し、若狭湾沖水深約280mから2500mにかけての5地点でコアおよび表層堆積物を採取した。採取されたコアは過去10万年間をカバーし、氷期ー間氷期に対応した深層水の酸化・還元環境変化の繰り返しを記録していた。採取されたコア試料の分割作業は、2015年8月31日-9月4日と2016年3月7日-11日の2回に分けて行われた。これらの試料についても、現在セリウム同位体分析を行っている。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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www-sys.eps.s.u-tokyo.ac.jp/~tada/