研究課題
サンゴ骨格に記録される炭素安定同位体比のvital effect は呼吸由来の無機炭素が一部使用されていることによる可能性が高いことが、炭素同位体モジュールを組み込んだサンゴポリプモデルによる数値シミュレーションの結果から示唆されたが、シミュレーションを進めていく上で、呼吸由来の無機炭素が石灰化母液にどの程度混入するかで、vital effectに非常に強く効いてきてしまうことが分かったため、呼吸由来の無機炭素が石灰化母液に混入する割合を精査することが重要であることが分かった。今後は、その妥当な割合を絞り込んでいく必要がある。一方で、実際のサンゴ骨格記録を精査するために環境データとの比較が必要であるが、比較のための十分な時空間解像度の環境データをそろえることが困難であった。そのためサンゴ骨格をサンプリングした石西礁湖海域における過去のサンゴの生育環境自体を、海域の3次元流動モデルを用いて再現することを試みた。海流シミュレーション結果と石西礁湖海域に設置した水温ロガー等の観測値とを比較した結果、数値シミュレーションによって十分な精度で水温環境が復元できることが確認された。
3: やや遅れている
開発を進めている炭素同位体モジュールにおいて、呼吸由来の炭素の石灰化母液への混入の割合をどのように設定するか、またどのようにその妥当性を担保するかは、モデル全体の精度や信頼性を決める上で非常に重要であり、慎重に評価する必要があったが、そのためのサンゴ飼育実験に失敗してしまったため、十分な検討を進められなかった。また、現場環境データとサンゴ骨格記録との比較のために環境データ自体を数値シミュレーションによって再現する必要性が生じたため、そのモデル開発に多くの時間を要した。そのため、当初炭素同位体に加えSr/Ca比やホウ素同位体のvital effectの検討を計画していたが、未着手となってしまった。
サンゴの飼育実験を実施し、モデル化に必要な各パラメータの推定を行う。それらを基にサンゴポリプモデルの炭素同位体モジュールを完成させる。また、そのモデルを用いて、サンゴ骨格記録から環境パラメータを逆推定する手法の開発を行う。さらには、その推定手法を用いて、実際の長尺サンゴコアのデータを用いて、環境パラメータの復元を試みる。
平成27年度にvital effect のメカニズム解明およびモデルの検証データにむけてサンゴの飼育実験を行いう予定であったが、技術的な問題から飼育実験の実施前にサンゴが死滅してしまったため、実験を実施することが出来なかった。平成28年度に再度実験を行うために、それに必要な経費を一部繰り越した。
サンゴの飼育に必要な消耗品や、採取したサンプルを分析するための試薬や消耗品に充てる予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件)
Diversity
巻: 8 ページ: 記載なし
10.3390/d8020009
Regional Studies in Marine Science
巻: 2 ページ: 27-31
10.1016/j.rsma.2015.08.012