• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実績報告書

竜骨ノジュールを用いた海底古水温計の開発

研究課題

研究課題/領域番号 26610168
研究機関金沢大学

研究代表者

長谷川 卓  金沢大学, 自然システム学系, 教授 (50272943)

研究分担者 ジェンキンズ ロバート  金沢大学, 自然システム学系, 助教 (10451824)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード化石 / 生態系 / メタン / 鯨骨群集 / 炭素同位体比 / 硫黄同位体比
研究実績の概要

竜骨ノジュールとは,白亜紀以前の海洋の海底で,大型脊椎動物の死骸を中心に形成されたノジュールのことで,現在の海洋では鯨骨群集として知られるような生態系を形成していた場所に形成されたものである.
炭酸塩鉱物に微量に取り込まれる硫酸態硫黄の同位体比は,ノジュール形成場所の酸化還元状態を記録する.得られた硫黄同位体比は4か所でいずれも4-6‰の値を示した.取り込まれた硫酸イオンの少なくとも一部は一度還元態硫黄となり,その後水の入れ替わりにより再酸化を受けたものである.つまり酸化還元境界がノジュール表面に非常に近い場所に存在した(パッチ状に)ことを示す.
炭素同位体比は竜骨付近で漸進的に約-20‰から約9.5‰へと約30‰も変化しており,最終的にはメタン生成が生じたことが明らかである.このことはノジュールの形成の進行に従ってメタン発酵の影響が強まり,また周囲の海水との交流も閉ざされていったことを明瞭に示す.このノジュールの形成場所は元来極度の還元状態であったのではなく,周囲には酸素を含む海水があり,竜骨近傍のみで酸化還元状態が変化してノジュール形成が進行していったのであろう.酸素同位体比は,漸進的に約-0.4‰から-3.6‰へとシフトしており,石灰化の末期では周囲の水とノジュール形成の母液とが十分に交換されておらず,骨の内側ほど海水に近い母液から晶出したと考えられる.この-0.4‰という値は,約40Km南方の羽幌地域で底生有孔虫化石から得られた酸素同位体比に一致し,水温換算値は約15℃である.
ノジュールの酸素同位体比を用いた海水温推定を行うに当たり,竜骨ノジュールの成因をしっかりと理解しておく必要がある.竜骨ノジュールを用いて海底古水温を推定できる(少なくとも,本研究で用いた試料では)ことが明らかになったが,竜骨との位置関係に留意してデータを出して考察を進めることが重要である.

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)

  • [国際共同研究] ザパラ市オルザッハー博物館(アルゼンチン)

    • 国名
      アルゼンチン
    • 外国機関名
      ザパラ市オルザッハー博物館
  • [国際共同研究] ポーランド科学アカデミー古生物学研究所(ポーランド)

    • 国名
      ポーランド
    • 外国機関名
      ポーランド科学アカデミー古生物学研究所
  • [雑誌論文] A late Miocene methane-seep deposit bearing methane-trapping silica minerals at Joetsu, central Japan.2016

    • 著者名/発表者名
      Miyajima, Y., Watanabe, Y., Yanagisawa, Y., Amano, K., Hasegawa, T. and Shimobayashi, N.
    • 雑誌名

      Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology

      巻: in press ページ: in press

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Syndepositional formation of calcareous nodules on muddy sea floor: visual and stable isotope characterization for paleothermometry.2016

    • 著者名/発表者名
      Hasegawa, T., Kobiyama, Y., Yonezawa, S., Suzuki, T. and Mori, T.
    • 学会等名
      The 165th Regular Meeting of The Palaeontological Society of Japan
    • 発表場所
      京都大学, 京都
    • 年月日
      2016-01-31
  • [学会発表] 白亜紀の同位体比層序と国際対比:コメント2016

    • 著者名/発表者名
      長谷川卓
    • 学会等名
      日本古生物学会第165回例会
    • 発表場所
      京都大学, 京都
    • 年月日
      2016-01-29
  • [学会発表] Syndepositional formation of calcareous nodules on Cretaceous muddy sea floor: potential muddy nodule paleothermometry.2015

    • 著者名/発表者名
      Hasegawa, T., Kobiyama, Y., Yonezawa, S., Suzuki, T. and Mori, T.
    • 学会等名
      Geological Societiy of America 2015 Annual Meeting
    • 発表場所
      Baltimore, USA
    • 年月日
      2015-11-04
    • 国際学会
  • [備考] 金沢大学地球環境進化学研究室・長谷川研究室

    • URL

      http://earth.s.kanazawa-u.ac.jp/Paleo_Lab/index.html

  • [備考] 金沢大学古生物学研究室・ロバートジェンキンズ

    • URL

      http://www.paleo-fossil.com/~robert_jenkins/index.html

URL: 

公開日: 2017-01-06  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi