研究課題/領域番号 |
26610174
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
瀬戸 雄介 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (10399818)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | コンドリュール / 始原的隕石 / ガス浮遊法 / 結晶成長 |
研究実績の概要 |
コンドリュールとは始原的隕石に含まれる球状の物質であり、45.6億年前に何らかの加熱プロセスで溶融したケイ酸塩と金属鉄の混合物が急冷して出来たと考えらえている。太陽系形成時の情報を多く有していることから様々な研究が行われているが、コンドリュールが具体的にどのような条件(加熱/冷却速度、雰囲気、最高到達温度)で形成したかについては様々な説があり惑星科学における未解決の課題となっている。コンドリュール形成プロセスを解明するには、再現実験的アプローチが不可欠であるが、宇宙空間を模擬(無重力、無容器、還元雰囲気)することは技術的に困難な点が多く、再現実験による研究報告は十分ではなかった。そこで、本研究では、縦型管状炉とガス浮遊法を組み合わせたシステムを開発し、無容器状態での酸化還元雰囲気制御と高精度の冷却制御を実現することによって、これまで行われてこなかった多成分系(特にFeを含む系)を出発物質とした実験を行う。これによって、原始惑星系円盤におけるコンドリュール形成条件の制約を目指すものである。本年次では、縦型管状炉のセットアップとガス導入のキャリブレーションをおこなった。管状炉の熱源には、十分な高温(>1600 ℃)を実現し、還元雰囲気にも耐久性の高いシリコニット発熱体を採用した。比較的内径の大きな炉心管を用いて、浮遊ノズルを導入するクリアランスを確保した。炉心管下部からCO2, H2, Arの混合ガスを導入し、雰囲気制御を可能にした。ヒーター出力に対する温度応答特性を校正し、現在までに0.1℃単位での温度制御を実現している。また、浮遊ノズルの形状についての検討を行い、直径1~2 mm程度のケイ酸塩を浮遊させる場合、ノズル部の円錐角が45°でガス導入口径0.5 mmの条件の時には 500 cc/min 程度の流量が適当であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年次では、縦型管状炉のセットアップと、ガス導入のキャリブレーションをおこない、順調に進めることが出来た。デジタル制御による高精度の温度調節(0.1℃単位)とガス流量調節(1 cc/min単位)を達成し、浮遊加熱を実現するうえで十分な装置スペックを確保したといえる。これらの制御機器は部品単位で調達し、組み立てを行うことによって、コストを最小限に抑えることが出来た。一方、浮遊システム部について、常温でのテストを行っている段階であり、高温環境での運用は次年度以降の課題となる。また、ノズル部の材料物質について、当初アモルファスカーボンを用いる予定であったが、掘削よる加工がやや困難であることが判明したため、アイソトロピックグラファイト(細粒なグラファイトの緻密な多結晶体)に変更する予定である。以上の状況を総合的に勘案して、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降は、主に浮遊システムの構築を行う。グラファイトで作成したノズル部を炉心管中央部に設置し、下部から混合ガスを導入することによって試料を浮遊させる。グラファイトを材料として使用する利点は、比較的安価であり、加工が容易なことや化学的に安定であることがあげられるが、高温では気化してしまうため、実験の都度交換する必要がある。そのため、ノズル部はアルミナの碍子にはめ込むような形状に加工し、取り換えを容易にする。また、ノズル部近辺ではガスが周囲と平衡温度に達していない可能性が高いため、ノズル下部にバッファー槽を設ける事や、最高温度部に到達する以前にガス導入管を加熱する事を検討する。浮遊した試料はミラーを介して長焦点のCCDカメラでモニタリングする。ノズル近辺に設置した熱電対の起電圧をPIDコントローラに入力し、ヒーターにフィードバックして温度を調節する。また、冷却に関して、冷却速度が自然放熱で間に合わない場合は、冷却信号をマスフローコントローラに入力し、流量バルブを調節することで、試料を強制冷却する。これらの工夫を通じて、安定した浮遊条件を見積もる。
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次年度使用額が生じた理由 |
温度調節計、ガス流量調節計、電力制御機器などについて、部品単位で調達し組み立てを行ったことによって、コストを最小限に抑えることが出来たため。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品であるシリコニット発熱体や、アルミナ製の炉心管や碍子、加工用のドリルなどを購入する予定である。
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