前年度末にカールツァイスマイクロスコピー株式会社市ヶ谷ラボにて,国際宇宙ステーションに搭載されていたポリイミドフォームのうちで最も大きな衝突孔を持つものについて,X線顕微鏡を使った3Dイメージングを行い,トラックの可視化を行った。3DデータにもとづいてポリイミドフォームをJAXAつくば宇宙センターのクリーンルームにおいて切断し,トラックを伸長方向に縦に2分割を行った。切断したポリイミドフォームは九州大学に持ち帰り,クリーンブース内で観察・加工を行った。捕獲トラックはシリカエアロジェルの場合と似たキャロット状形状をしていた。このトラック内壁を実体顕微鏡で観察したが,捕獲粒子を確認することができなかった。3Dイメージングの再構成像を1枚ずつチェックしたが,大きさ8ミクロンよりも大きな捕獲粒子はトラック先端付近には存在しなかった。 そこで,更に小さな捕獲粒子の探索を行うため,2分割したトラックをクリーンブース内で深さ方向に3つに分割し,計6個のトラックを含むポリイミドフォーム小片にした。6つのポリイミドフォーム片を,研究代表者が所持しているFIB-SEMの低真空モードを使って,無蒸着で観察とEDS分析を行った。この結果,大きさ1から数ミクロン(最大8×4ミクロン)のFeをほとんど含まないオリビン,高Ca輝石の破片が多数散在していることを見出した。その他,Na,K,Clが検出されることもあった。ところが,回収可能だった最大の捕獲粒子は非晶質SiO2であった。すなわち,この捕獲トラックを形成した物質は2次デブリであった。本研究によって,ポリイミドフォームからの試料回収方法は確立できたが,残念なことに,地球外物質は分析できなかった。このため,ポリイミドフォームやシリカエアロジェルを固定していたアルミ板に形成された微小クレーター残留物の観察と分析を行う計画を進めている。
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