研究課題
地球惑星科学において、Uの放射壊変系を利用したU-Pb絶対年代分析は太陽系史/地球史/生命史を解読する強力なアプローチであり、これまで市販の2次イオン質量分析計(Secondary Ion Mass Spectrometer: SIMS)による局所U-Pb年代分析が盛んに行われてきた。一般にSIMSは、2次イオンの生成効率が1%以下と非常に低く、スパッタされた試料のうち大部分が中性粒子であるため、試料のロスに対して感度が低いことが最大の弱点であった。そこで本計画1年目は、1次イオンビームでスパッタされた中性粒子を高出力のフェムト秒レーザーでポストイオン化させる基礎実験を行い、2次イオン生成率をレーザーを使用しない時と比べ2万倍以上に向上させることに成功した。これにより検出限界を1桁向上させ0.1wt%を達成した。本計画2年目は、飛行時間型(Time of Flight型)質量分析計の検出器の信号処理法の改良に着手した。1kHzの電流変化を約10万ショット積算する従来の検出方法はホワイトノイズも含め積算するためS/N比が悪く、微量元素の同位体分析には不向きであった。そこで、閾値を超えたイベントを高い時間分解能で識別し積算するイオンカウンティング法を新たに導入し、S/N比を劇的に向上した。この改良により検出感度がさらに1桁上がり(本研究開始前から2桁よくなり)、ウラン濃度100ppmの天然スタンダードジルコン91500の直径1μm以下の極微小領域から、ウランとその酸化物のピークを優位に検出することが可能となった。本研究により「サブミクロンスケールの局所同位体分析が可能な2次中性粒子質量分析計の実現」に向け大きく進展した。
すべて 2016 2015 その他
すべて 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
http://planet.ess.sci.osaka-u.ac.jp/contents/research/research3.html