研究課題/領域番号 |
26610184
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
千秋 博紀 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 上席研究員 (30359202)
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研究分担者 |
黒澤 耕介 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 研究員 (80616433)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 流星 / 人工流星 / 二段式軽ガス銃 / 流星発光 / 高速撮像計測 / 発光分光計測 / 熱気体力学 |
研究実績の概要 |
平成27年度は,実験システムの構築と,平成26年度に準備した観測用チャンバを利用した人工流星形成実験を行った。
本研究は,二段式軽ガス銃から射出された弾丸を高圧(1/100~1気圧程度)の中に突入させることで人工流星を形成し,その測定から,天然の流星の発光メカニズム・流星が引き起こす化学反応を明らかにすることを目的としている。同様の目的のために低圧部と高圧部の間に設置された隔膜を弾丸に突き破らせる実験もあったが,隔膜を突き破る際に弾丸が壊れてしまうため,コントロール実験として肝心な初期条件が不確かになるという問題があった。またアーク風洞を利用して固定した流星(弾丸)に高速気流を流す実験も行われているが,流星との相互作用と無関係に気流は熱くなっており,流星体の加熱機構を模擬できているとは言い難い。 これに対して本研究では容積の大きな観測チャンバ(平成26年度に準備した750mmの観測窓を有するチャンバ)を用意することで高圧側の気圧を長時間維持できるようにした。また高圧側と低圧側の境にゲートバルブを設置,ゲートバルブの開放時間と観測チャンバ内の減圧の様子について繰り返し試験を行い,観測チャンバが任意の圧力の際に,弾丸を突入させることができるシステムを構築した。この際,観測チャンバから上流の大容量チャンバへ流出するガスの流れを制御するために,平成26年度に準備したガス拡散コーンを利用している。
こうして構築した人工流星観測用のチャンバを利用して,金属やポリカーボネイトの弾丸を用いた,人工流星の観測を行った。平成26年度に行った,銃システム全体を加圧しておいてから発射する実験手法に比べると弾道が格段に安定し,その結果,高速ビデオカメラや高時間分解能の分光計を用いた人工流星の構造と温度・組成分布に迫るデータが得られた。これらの実験成果については,2016年3月に米国・テキサス州で開催された月惑星科学会議で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験はほぼ予定通りに進めることができた。 マシンタイムの確保の都合により実験回数は多くはないが,ゲートバルブを利用した実験システムは圧力の再現性が良く,また弾道も安定するため,データの取得効率が非常によかった。このため,3種類の金属(アルミニウム,酸化アルミニウム,ステンレス)およびポリカーボネイトの弾丸の場合についてそれぞれ実験を行うことができた。これによって,人工流星近傍の温度分布や,近傍で生じているイオンの種類の特定ができた。データの解析は継続して行っている。
一方で,良質なデータが取得でき,その解析を優先したぶん,流星の運動に関する数値モデルの構築が予定よりも遅れてる。これに関しては,平成26年度に取得した数値コードに加え,平成28年3月の国際学会の席上で外国の研究者からも協力の提案を頂いており,平成28年度までに計画していた研究を達成できるものと思われる。
よって総じて,研究はおおむね順調であると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
実験システムは細かな調整を除いて完成した。今後はこの実験システムを利用して,人工流星形成実験を推し進める。ただし,現行のシステムでは使用できる弾丸は既存の,直径4.8mmまたは2mmの球のみであるので,天然の岩石または隕石を,射出できる形・サイズに成型する手法の開拓を試みる。 数値モデルの構築が遅れているが,上に書いたように多くの協力提供の提案を頂いており,平成28年度中に計画を完遂できる見込みである。
平成28年度は,流星科学の今後の発展を見据え,他の手法で人工流星を試みている研究者,また天然の流星を観測している研究者やアマチュア天文学者との連携も図ってゆく。
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