研究実績の概要 |
天然の流星は地球圏外からの物質流入の証拠であり,流入物の組成や質量を知ることは地球圏の進化や安定性を議論するうえで重要である.流星からの光を分光すると組成に関連する情報が得られるが,実際には温度・圧力などによって元素ごとの蒸発効率や電離度が異なるため,分光分析から初期組成を理論的に求めることは難しい.そもそも,流星はどの位置で発生するのか予測ができないため,詳細な統計的議論を行うために必要な多数回のスペクトル観測を行うのは困難である.これに対して本研究は,室内実験によって流星発光現象を再現することで,繰り返し,コントロール環境下で人工流星を作り出すための手法を確立し,天然の流星の観測結果の理解につなげることを目的としている. 実験には,千葉工業大学惑星探査研究センターが所有している2段式軽ガス銃を利用した.この装置は天体スケールの衝突現象の理解のために使われているもので,弾丸速度7-8 km/sが達成可能である.
我々は無隔膜でガス中に直径2-5mmの弾丸を突入させるための実験系の構築を行った. この装置を用いてステンレス, アルミ, アルミナ, プラスチックを加速し, 人工流星を生成可能であることを確認した. また,弾丸とその周囲からの発光を高速ビデオカメラ(毎秒100万フレーム)と高速分光器(波長分解能6nm以下,時間分解能3ns以下)とで観測した.この結果,流星体がヘッド,ネック,テイルの構造を持つこと,ヘッド部では黒体放射が見られること,テイル下流まで長時間にわたって輝線が見られることなどが明らかになった.今後, 実際に隕石を用いて系統的に流星発光を調べる目処がたったといえる.
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