理化学研究所において開発中の電子サイクロトロン共鳴イオン源質量分析装置(ECRIS-MS)をそのイオン源の感度性能や汎用性を活かし、同位体分析装置としてカスタマイズし、惑星物質の同位体分析を多元素に対して、同時分析を実現するのが、本研究課題の目的である。平成27年度においては、平成26年度までに行われた、検出系、イオン源試料導入系の基本的なカスタマイズ及び、レーザーアブレーションシステムの導入という基盤技術の検証を引き続き行った。その結果、固体試料の同位体分析に対応することが可能ではあるが、検出系に、主としてファラデーカップの駆動系に起因するノイズが発生することが判明した。また、検出器前に設置したスリットの駆動系と質量スペクトルの精密同期が取れていないことも問題として明らかになった。そこで、平成27年度において、さらに、以下の実験を実施した。また、レーザーアブレーションシステムで得られたイオンデータを2次元マッピングとして展開するシステムについても開発を行った。 1.高速移動式のスリットと大型のファラデーカップを組み合わせた疑似複式検出器の駆動システムを材質を変えて改良したガイドレールを基に位置センサーを改良した物に変更した。 2.レーザーアブレーションシステムの光学系の調整と試料保持システムの改良を行った。 3.天然のモリブデン鉱石に対して、モリブデン及び周辺元素の同位体分析を実施した。 4.同位体データを位置情報と組み合わせた2次元の表データとし、PythonのグラフィックモジュールであるMatplotlibを用いて画像処理するシステムを試作し、動作確認を行った。
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