研究課題
本研究では「深海熱水噴出孔で自然発生した電気が硫化鉱物を流れ化学進化における炭酸固定反応や重合反応を促進させ生命の誕生をもたらした」という「電気パイライト表面代謝」仮説を提案し、その現実性を検証することを目的とした。すなわち、(1) 生命誕生以前の熱水で発生し得る電気量を推定し、(2) その電界下の鉱物表面が有機化学反応の触媒や反応場として有利に機能するかを検証することを目指した。我々は、深海用電気化学測定装置を用いて深海熱水噴孔に形成される硫化鉱物について現場電位測定を行った。その結果、鉱物表面の電位が海底下の熱水の影響を強く受けていくことが確かめられ、これによって深海熱水噴出孔の熱水と海水を境界する硫化鉱物中に電流が発生することを発見した。得られた電位の実測値を基にして生命誕生時の海洋環境の物理・化学条件に入れ替えることで、当時の熱水電位を予測した。さらに、実験室において硫化鉱物表面の電位を操作し生命誕生時の電位を与えたところ、基礎的な有機代謝経路(炭酸固定経路・アミノ酸合成など)の一部が駆動することを確かめることができた。これらの発見は熱水電流が化学進化を促進したとする我々が提案する仮説を裏付けるものであり、生命が深海熱水噴出孔周辺で誕生したとする仮説を強く支持するものである。これらの成果の一部を学会等で発表した。現在、成果をまとめた論文を投稿中、または執筆中である。近く公表される予定である。
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