実験研究として、超音速プラズマジェット発生装置を利用し、大気圧定常アーク放電で得た窒素及び窒素混合気体プラズマを、陽極ノズルから弱い縦磁場下の低圧風洞中に定常噴出することで低温高密度プラズマを生成した。この装置の上流~下流の各領域において、得られるプラズマパラメータを発光分光計測およびプローブ計測により求めた。その結果、低圧放電で顕著な窒素分子励起状態のバンドスペクトルは全く観察されず、窒素原子励起状態の発光が卓越する結果となった。考察の結果、窒素アークジェットプラズマは低温再結合状態となっており、初期温度が熱平衡のアーク放電プラズである事から、熱的な解離過程のため膨張の前段階から原子を主成分とするプラズマ状態となっていると結論された。計測した窒素原子の励起状態数密度からBoltzmann プロットを作成した所、典型的な再結合プラズマの数密度分布を示す事が確認された。窒素原子高励起準位から電子温度を求めた所、プローブ計測と矛盾の無い値が得られ、この事からも本研究の窒素プラズマが再結合プラズマで有る事、また励起状態が窒素原子イオンの再結合によるものである事が確認され、窒素分子が殆ど存在せず、窒素原子イオンの再結合により窒素原子の励起状態の発光が卓越するプラズマである事が確認された。 一方理論的数値シミュレーションとして、窒素プラズマ中の励起状態生成消滅のモデル化の改良に努めた。窒素分子の電子基底X状態の振動励起状態数密度分布、電子励起状態密度分布(CRモデルによる)、そしてEEDFを決定するBoltzmann方程式を連立してSelf-Consistentに解き、定常非平衡状態の励起状態生成消滅のカイネティックスの定量的理解に努めたが、今回の再結合プラズマでは解離度が大きく、従来の電離進行プラズマを中心としたモデリングの大幅改良が必要であることが見出された。
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