研究課題/領域番号 |
26610195
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
佐々木 明 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門量子ビーム応用研究センター, 研究副主幹 (10215709)
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研究分担者 |
砂原 淳 公益財団法人レーザー技術総合研究所, 理論・シミュレーションチーム, 副主任研究員 (00370213)
西原 功修 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 特任研究員 (40107131)
西川 亘 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (80243492)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 相転移 / 臨界現象 / 流体シミュレーション / EUV光源 / レーザー生成プラズマ |
研究実績の概要 |
レーザープラズマEUV光源などにおいて、その特性に影響を与えるプラズマの不均一性の生成メカニズムの解明を目指した研究を行った。レーザー照射初期に、ターゲット物質が固体から液体、気体状態を経てプラズマ状態へと変化する際に、相転移に伴って自発的な構造形成が起こり、プラズマの不均一性が生じる可能性があると考えられるが、これを明らかにするための理論的な解析と、シミュレーションモデルの構築を行った。 EUV光源の研究において、Snのマイクロドロップレットをまず低強度のプリパルスレーザーで照射してプラズマを予備生成し、次に高強度の炭酸ガスレーザーで加熱することで高効率でEUV光が発生することが実験的に示されていることから、プリパルスレーザー照射において、ターゲットが破砕され、微粒子となって分散する過程を最適化することを目指した。 理論的な解析においては、平衡熱力学の考え方に基づき、気体状態は理想気体で、液体(固体)状態は、デューロンプティ則に従う、調和振動子の集まりであると考え、任意の温度、密度の状態を、両者の混合によって表現するモデルについて検討した。また、気液相転移の転移点は、ファンデルワールスモデルにマクセルの規則を適用して求められるとした。そして、流体シミュレーションに用いる状態方程式を構築し、熱力学的な諸量の定式化を行った。 シミュレーションモデルの構築においては、流体とともに動くラグランジメッシュを用いた流体シミュレーションコードにおいて、メッシュの任意の分割、融合によって、メッシュの破綻を防ぎつつ、気液相転移、気相と液相の状態の分布を取り扱う方法について検討を行った。特に、媒質の温度、密度状態が気液共存状態と見なされる状態になったとき、ひとつのラグランジセルを、気相と液相のセルに分割し、相転移、相分離を表現するアルゴリズムについて検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した、モデルの理論的な考察と、シミュレーションコードの開発において、平成26年度は、前者については、具体的な計算の対象と考えられるSnの気相、液相(固相)に関する状態方程式の構築、相転移条件の決定を行った。後者については、三角メッシュを用いた二次元ラグランジシミュレーションにおいて、セルの分割、融合のアルゴリズムの開発とその実装を行った。これらにおいて、計画した内容はほぼ達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降、理論モデル、シミュレーションコードの開発において、はじめに、モデルの中核部分である、気液相転移を含む流体シミュレーションについて、理論的、実験的な検証を行う。高温の気体、液体が自由空間に断熱膨張する条件、低温の液体(固体)を衝撃波圧縮するなどの基本的なテスト問題を実行して、結果を検証する。特に、液体の沸騰、気体の凝縮が起こる条件の計算を行って、従来のモデルとの比較、気液混合状態の生成が、流体のダイナミクスに与える影響について検討する。そして、計算の精度や信頼性の向上のために必要な物理モデル、数値計算アルゴリズムの改良を行う。 次にレーザープラズマEUV光源のシミュレーションのために必要な、レーザープラズマ固有の物理(電子熱伝導、レーザー吸収、輻射損失等)についてのモデリングを行う。そして、コードを完成させたのち、まず、単純なテスト問題を実行して、シミュレーションを構成するモデルの各要素について計算が正しいことを確かめる。次に、より実際のEUV光源の近い条件における計算、プリパルスレーザー照射による微粒子の生成、その分布の時間発展等の評価を行う。さらに、EUV光源の性能の評価、最適化のための計算を行う。また、コードの開発、検証、データプロダクションを進めるために必要な開発環境や可視化プログラム、入出力データのデータベース構築も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、レーザー照射ターゲットの物理過程の解析や流体シミュレーションコードの計算手法、アルゴリズムの開発等において、理論的な研究が主体となり、実際のシミュレーションコードの実行、そのために必要なハードウエア、ソフトウエア等の購入に至らなかったために次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、平成26年度の研究によって開発したシミュレーションコードを用いて、実際のシミュレーションコードの実行を行うため、必要なハードウエア、ソフトウエアの整備や、得られた成果の発表、学会発表、論文投稿、およびそのための国内、外国出張、論文の英文校閲等を行うために次年度使用額分の予算を使用する計画である。
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