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2014 年度 実施状況報告書

巨大自己集合体の規則的運動制御に向けた走査NMR顕微鏡による分子レベル動態解析

研究課題

研究課題/領域番号 26620001
研究機関北海道大学

研究代表者

武田 定  北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00155011)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワードマイクロコイルNMR / 分子自己集合体 / 走査型NMR顕微鏡 / 分子の運動 / 巨視的運動
研究実績の概要

1.本研究に特化したNMR分光器として米国Tecmag社のLapNMRシングルボード分光器が7月に納入された。この分光器にプリアンプやパワーアンプを接続してNMRシステムを構築し、パルス系列などが正常に動作することを確認した。この際ソフトウェアの不具合などが見つかり、米国Tecmag社と連絡を取りながらその修正を行った。
2.既設の二重共鳴NMRプローブ(1H核とX核:~40~130MHzの同調が可能)を改造し、試料観察用の顕微鏡を組み込み、CCDカメラによりコンピュータ経由で画像を観察できるように光学系を組み、~10μm程度の解像度で画像を観察できることを確認した。
3.卵黄レシチンが造る直径~100μmの二重ラセン鎖にアゾベンゼン誘導体をドープし光照射下でcis/trans変換によるマクロな動きが起こるかどうかを通常の顕微鏡下で観察した。二重ラセン鎖のほどけや巻き戻しといった大規模の運動は起こらなかったが、二重ラセンを構成する紐状の構造体が膨らんだり縮んだりする変化を確認でした。また当初の計画では、顕微鏡観察用のガラス薄板(150μm)に挟まれた厚さ100~200μmの溶液中の二重ラセン鎖を観測する計画であったが、上記の観察中に内径が数100μmのガラスキャピラリの方が二重ラセンを成長させやすいことも見いだされた。
4.「走査NMR顕微鏡」による信号観察にはまだ至っていない。しかし、本研究で目指している「走査NMR顕微鏡」と相補的な観測が可能と考えられる「XバンドESRとNMR観測を合体させた動的核分極によるNMR信号増強」の測定を行った。この方法ではドープした有機ラジカルの近傍のNMR信号が動的核分極により数十倍以上増強され、卵黄レシチンが作る巨大なラセン表面近傍の水分子の流動性を観測することができた。この手法による空間分解能は「走査NMR顕微鏡」による空間分解能とは別の意味を持つが、両者を相補的に組み合わせていく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

1.本研究に特化したNMR分光器システムの構築は7月に納入されたコンポーネントを組み立てて、調整を行ったが、この際ソフトウェアの不具合などが見つかり、米国Tecmag社と連絡をやりとりしながらその修正を行ったが、これにより時間を要した。
2.「走査NMR顕微鏡」による信号観察にはまだ至っていない。しかし、本研究で目指している「走査NMR顕微鏡」と相補的な観測が可能と考えられる「XバンドESRとNMR観測を合体させた動的核分極によるNMR信号増強」の測定を行った。これは本研究目的の別の側面であり、観測方法としては相補的であるためこの実施にも時間を割いた。この方法ではドープした有機ラジカルの近傍のNMR信号が動的核分極により数十倍以上増強され、卵黄レシチンが作る巨大なラセン表面近傍の水分子の流動性を観測することができた。この手法による空間分解能は「走査NMR顕微鏡」による空間分解能とは別の意味を持つが、両者を相補的に組み合わせていく。

今後の研究の推進方策

1.まずは「走査NMR顕微鏡」のプローブ部分の最終調整を行う。具体的には超電導磁石にセットした状態で、卵黄レシチンが作る直径~100μmの二重ラセン鎖の31P(I=1/2)核の化学シフトの異方性の測定を行う。緩和時間が長い場合は測定に時間を要するため、26年度に行った「動的核分極によるNMR信号増強の測定」を参考にして、両親媒性有機ラジカル誘導体(すでに合成済み)をドープして緩和時間を短くするとともに、有機ラジカルのESR信号の異方性からラジカル分子の運動の異方性を解析し、「走査NMR顕微鏡」による31P核の化学シフトの異方性の測定と比較検討して、卵黄レシチン分子の二重ラセン鎖内における運動状態を見積もる。
2.1.の実験がうまく進んだ後に、両親媒性アゾベンゼン誘導体(すでに合成済み)を二重ラセン鎖にドープして光照射によるアゾベンゼン誘導体のcis/trans変換によって卵黄レシチン分子の運動性(化学シフトの異方性に現れる運動の異方性など)が変化するかどうかを確認する。
3.螺旋状のオレイン酸自己集合体のサイズは太さが数10μmと小さいため、「走査NMR顕微鏡」による測定は27年度内には困難かもしれない。最近、大きさが数100μmの板状で結晶性のオレイン酸自己集合体が、両親媒性アゾベンゼン誘導体と共結晶を作ることにより、定常光照射下で規則的な振動を発現することを別のプロジェクトで見いだした。この板状で結晶性のオレイン酸自己集合体はサイズが大きく「走査NMR顕微鏡」による観測を行いやすいと考えられるため、27年度内の観測を目指す。NMR測定対象核は、まずは23Naとする。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2015

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] in-situ 14.3 MHz ODNP-NMR分光計による分子集合体を取り囲む水のNMR測定2015

    • 著者名/発表者名
      景山義之・近藤僚太・武田定
    • 学会等名
      第95日本化学会春季年会
    • 発表場所
      日本大学船橋キャンパス,千葉県船橋市
    • 年月日
      2015-03-26 – 2015-03-29
  • [学会発表] XバンドESRを用いた動的核分極NMR測定装置の作製と信号観測2015

    • 著者名/発表者名
      近藤僚太・景山義之・武田定
    • 学会等名
      化学系学協会北海道支部2015年冬季研究発表会
    • 発表場所
      北海道大学,北海道札幌市
    • 年月日
      2015-01-27 – 2015-01-28

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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