研究実績の概要 |
これまでにフェムト秒レーザーフィラメントを強レーザー反応場として用いることで, (i)エチレンから水素化アモルファスカーボンが生成されること, (ii)レーザー強度の増加とともに解離反応が促進されsp2炭素を多く含む微粒子が生成すること, を見出した。本年度は,レーザーフィラメントを発生させる強レーザー光に加え, 解離反応を誘起させる光を導入することで気相エチレンの会合反応の制御を試みるとともに, その反応過程を明らかにすることを目的とした。強レーザー光の強度を1 mJ/pulseとした場合,白色の生成物が得られ, その顕微鏡像から大きさが数μm以下の微粒子の生成が確認された。一方,制御光として第二次高調波を加えると, 白色の生成物に加え, 集光点付近に黄色の生成物が観察された。白色の生成物のラマンスペクトルには蛍光のみが観測され, 水素分率の高い水素化アモルファスカーボンの生成が示唆された。これに対して黄色の生成物のスペクトルには蛍光成分以外に幅広いラマンピークが観測され,低水素分率アモルファスカーボンが含まれていることが明らかとなった。このことは,先の研究でレーザー強度の増加とともに見られていた生成物の変化が,強レーザー場とエチレン分子の相互作用による解離反応の促進によって誘起されることを示している。また,気相ベンゼンをサンプルとしてレーザーフィラメントによる会合反応を試みたところ,粘性の高い黄色から黒色の生成物が得られた。MALDI, NMRなどによる分析から,多環芳香族炭化水素PAHの生成が示唆された。
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