研究課題
前年度までの研究において、ロドプシンの発色団周辺にアミノ酸変異を施すと、野生型よりも長波長に吸収を持つ多数の変異体を作製することができる一方で、それと共に輸送機能が消失してしまう問題点が生じていた。そこで今年度は更なる網羅的なアミノ酸変異による機能性分子の探索を実施した。その結果KR2について40 nm以上長波長シフトを示しながら、野生型とほぼ変わらない輸送能を持つ分子の作製に成功した。この分子については、本研究の主目的である従来よりも長波長の光を用いた神経操作が可能なオプトジェネティクスツールとして期待される。また新たに海洋性細菌から内向きにH+を能動輸送する、光駆動型内向きH+ポンプロドプシンを新たに発見し、その機能機構や輸送能を向上させた変異体作製についての成果を注目度の高い総合科学誌である、Nature Commun.誌に報告した。一方でJ. Biol. Chem.誌に報告した、H+、Cl-及びNa+ポンプ型ロドプシンの間の機能転換研究についての論文が、同誌の2016年のHighlight論文(掲載論文2,377報中23報)に選ばれた。このことは本研究で行った研究成果が国際的にも非常に高い評価と注目度を得ていることを示すものである。またこれまで集中的に研究が行われてきたKR2以外のNa+ポンプを用いた新規オプトジェネティクスツールや、Na+ポンプの輸送に関わる光反応の初期過程についての分光研究の成果をそれぞれPLOS ONE誌及びJ. Phys. Chem. Lett.誌に報告した。今年度はこれらを含めロドプシン研究についての成果を8報の論文と3報の解説、15件の招待講演などで発表した。また本年度研究代表者の井上は、ロドプシン研究について26th IUPAC International Symposium on Photochemistryで口頭発表を行い、その成果について「Awards for excellent presentations: Young researcher oral presentation awards」を受賞した。これは本研究の注目度の高さを示すものである。
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 3件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 7件、 謝辞記載あり 8件) 学会発表 (57件) (うち国際学会 25件、 招待講演 14件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件)
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