研究課題/領域番号 |
26620008
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
福井 賢一 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (60262143)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イオン液体 / 溶出・析出プロセス / 有機半導体 / 界面制御 / 電界効果トランジスタ |
研究実績の概要 |
本研究は,イオン液体/有機半導体界面のAFM直接観察で申請者が見い出した,もっぱら“きれいな界面”で促進される界面有機分子の溶出現象の起源を明らかにするとともに,欠陥のないキャリア輸送界面を安価に創製するための方法へとつなげようとするものである。 H26年度は,「①有機半導体溶出プロセスの電気化学FM-AFM(EC-FM-AFM)による分子分解その場観察による解明」,「②電気化学ポテンシャルによる界面溶出・析出プロセスの制御」の2つの課題に取り組み,3件の原著論文,26件の学会発表に加え,分子層1層の垂直分解能,数ナノメートルの水平分解能をもつ有機半導体界面の任意形状加工を実現し,その方法について特許1件を出願した。特に,我々が独自に開発した電気化学界面の顕微観測手法であるEC-FM-AFMを用いて,結晶内では等価な位相の異なる列のルブレン分子がイオン液体との界面では相互作用によってユニットセルは保ったまま非等価な構造として現れるのを高分解能観察で見出したこと,さらにこの界面構造の秩序性は,同じイオン液体が他の固体結晶との界面で形成する構造秩序とは異質なものであることをEC-FM-AFMによる界面フォーススペクトル解析で実証するとともに,分子動力学計算によっても対応する結果が導かれた。 以上のように,本研究は溶出を起こす界面の局所環境の基礎的知見を得ることに加え,高精度の加工プロセスを提案する段階まで達している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H26年度において,本研究は,我々が独自に開発した電気化学界面の顕微観測手法である電気化学FM-AFMを用いて,イオン液体との界面で特有の有機分子結晶からの分子溶出現象の起源を明らかにすること,さらに界面構造をナノメートルスケールで加工して有機半導体の機能を制御することを目指してきた。その結果,電気化学FM-AFMによる界面の分子単位より小さな構造変位の評価や溶出現象のその場解析を可能にした学術的成果(3件の原著論文と26件の学会発表)に加え,分子層1層の垂直分解能,数ナノメートルの水平分解能をもつ有機半導体界面の任意形状加工を実現し,その方法について特許1件を出願したことは予想以上の達成速度である。
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今後の研究の推進方策 |
界面でのイオン液体分子の構造化や溶出を促進する相互作用の起源については,引き続き電気化学FM-AFMを用いた界面局所構造観察および界面フォーススペクトル測定の実験的解析,分子動力学計算による界面シミュレーションによる計算科学的解析により理解を深める。 さらに当初の研究計画通り,「③内殻からの光電子放出に伴う溶出促進過程の検討」にも取り組む。X線照射領域のイオン液体への溶出速度を圧倒的に高めることで,有機半導体の(X線ビーム径で決まる)加工を行う技術への結びつけようとする新たな試みである。 以上の方針のもと,本研究最終年度の研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末近くでの納期の関係で,消耗品の購入を次年度当初に変更したためであり,計画上の大きな変更はない。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度に当初予定していた通り消耗品の購入に充てる。
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