本研究はNMR分光やMRIの感度を向上する方法である光励起三重項状態にある電子スピンを偏極源に用いる動的核偏極(トリプレットDNP)法の実用化に向けた研究を進めてきた。本研究以前は非常に限られた固体試料しか高感度化に成功していなかった。本研究ではトリプレットDNP法でさまざまな分子や液体の高効率での高感度化を実現することを目的とした。 平成27年度では初めて水溶性の安息香酸の高効率での高感度化に成功した。さらに高感度化後に水に溶解させて、高偏極液体を生成し、この液体の高感度なNMR測定も実現した。 平成28年度では高偏極物質の入った試料管に水を投入した後のNMR信号の変化をリアルタイムに測定し、高偏極物質が少しずつ溶解していく様子を分析した。高偏極液体を用いてさまざまな分子を高感度化する方法とさまざまな高偏極液体を生成する方法を発明した。また、この方法が非常に低コストかつ省スペースで実現できる装置を開発した。本研究により、トリプレットDNPの汎用化学分析や医療診断への応用が今後大きく拓かれるであろう。
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