研究課題
物質中での正電荷ミュオンの詳細な振る舞いを明らかにするために、固体水素と希薄気体の二つの実験系を想定し、必要な実験システムの整備を行った。まず冷凍機を整備することにより、固体水素の生成システムを作成した。この実験システムは10K冷凍機と、必要な熱シールドからなっている。なお必要な検出系システムについては、実験を想定している茨城県東海村J-PARCをはじめとする、世界中のミュオン実験室には整備されているμSR実験装置を用いる予定である。もうひとつの系として、希薄気体との衝突に関する素過程を調べるために、低圧のガス衝突システムの整備をおこなった。この実験システムは、希薄ガスとミュオンを衝突させるガスセルと、ミュオンの検出装置、全体の真空チェンバーからなっている。本年度は真空チェンバーの整備と、ガスセルの作成、および検出器のテスト実験を行った。チェンバー作成についてはすでに真空試験を完了している。検出器のテストはJ-PARCミュオン実験施設において行った。ガスセルを設置していない条件において、実験で想定している2 MeV以下の低エネルギー正ミュオンを取り出し、プラスチックシンチレーション検出器を用いてミュオンの検出と、そのビームの広がりおよび強度測定を行った。これらの実験結果から、ビーム実験で使用するミュオンビームのコリメーターシステムの最適化と、ガスセルの長さや径について決定することができ、ビーム実験に向けて必要なマシンタイムの見積もりを行った。これら実験の成果は、適宜学会発表および査読付き学術論文で発表している。
2: おおむね順調に進展している
これまで実験がされていなかった、正ミュオンと物質との相互作用の詳細を調べるための実験システムの整備が着々と進んでいる。今年度はJ-PARCミュオン施設における火災事故とそれに関連したマシンタイムの削減から、実施することができなかったが、必要なテスト実験については実験時間を確保し、ビーム実験への準備が整いつつある。
今年度は、H26年度の実験で構築したシステムを用いて、当初予定していたようにミュオンを照射する実験を行う。このためにまずはベータ線源を用いて、電子により構築した実験システムのコミッショニングを行った後に、茨城県東海村J-PARCに実験装置を持ち込みビーム実験を行う。実験を行うにあたり、希薄試料導入システムの性能の不足がわかったために、今年度は新たにリークバルブの導入と、高精度の真空計を新たに整備する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件)
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry
巻: 303 ページ: 1277-1281
10.1007/s10967-014-3602-3