研究実績の概要 |
当初の予定通り、前年度に構築した高分解能のメカニカルステージとクローズドループ制御のピエゾステージを用いたマルチパス型(3往復)のマイケルソン干渉計の制御ルーチンの作成を行った。具体的には、メカニカルステージを所定の距離だけ移動した際に生じる位置の誤差に対して、参照光となるHe-Neレーザーの干渉フリンジシグナルを読み取ることで、命令した移動距離と実際にステージが移動した距離の誤差を見積り、その差をピエゾステージによって補正する、という一連の操作を自動化することが最大の目標である。まず、干渉計の遅延0の点を見出だし、ここを原点としてステージの移動と補正を繰り返し行い、最終的に目的の遅延時間まで光学遅延を生成するプログラムを完成させ、原点から実際に400ps, 800psの位置までステージの移動させた後に干渉測定を行う操作を繰り返し行い、移動後の位置の再現性を見積もったが、どうしても波長程度(~600nm)の位置のばらつきが生じてしまった。原因としては干渉計の静的な安定性の問題もあると考えられるが、最大の理由は参照光として使用していたレーザーの波長の安定性にあると考えられた。半導体レーザーを水冷型の温度安定化マウントに固定して温度の安定化を試みたが、逆に水流による振動が生じて干渉計は不安定になった。安定性の問題は残っていたものの、実際に固体パラ水素の結晶を用いて振動ラマン遷移のRamseyフリンジスペクトルの測定を5~10Kの範囲で行い、その周期の変化の測定を行ったが、再現性の面で大きな不確定性が残る結果となっている。当初の目的がダブル光コムなどの超高額機器を用いずに高分解能測定を実現することであったため、今後参照光レーザー光源のラムディップを用いた波長安定化や、多少高価だが波長安定化機能付きのレーザーを購入して用いることで性能の改善は可能であると考えられる。
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