研究課題/領域番号 |
26620013
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
立川 仁典 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 教授 (00267410)
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研究分担者 |
長嶋 雲兵 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (90164417)
宇田川 太郎 岐阜大学, 工学部, 助教 (70509356)
志賀 基之 独立行政法人日本原子力研究開発機構, その他部局等, 研究員 (40370407)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 水素結合型強誘電体 / 多成分系分子理論 / H/D同位体効果 |
研究実績の概要 |
水素結合型強誘電体の多くは、軽水素(H)を重水素(D)に置換することにより、構造相転移温度が100K近くも上昇するが、その分子論的な機構は未だ解明されていない。一方これまで申請者は、水素原子核の量子揺らぎにも適用可能な量子多成分系分子理論を構築し、数多くのシミュレーションを実現してきた。そこで本研究課題では、1.量子多成分系分子理論を大規模系に拡張することにより、2.水素結合型強誘電体における同位元素効果の分子論的起源を解明することを目的とする。本手法を駆使することにより、重水素置換に伴う、水素の量子揺らぎ、有効ポテンシャル変化、構造変化、電子状態変化、を解析し、分子論的起源の解明に挑戦する。特に初年度は、以下の2項目を実施した。 1.量子多成分系分子理論の大規模化:大規模な高精度計算を見据え、量子力学的な取扱いと古典力学的な取扱いを併用するQM/MM 法や、誘電体としてのPCM法を実装することにより、大規模計算可能なシステムを構築した。引き続き半経験的MO法やDFTB法との接続を行い、計算コストを抑える工夫も行っている。 2.水素結合型強誘電体の同位元素効果の分子論的解析: 先ず二量体クラスターモデルに対して計算を実行した。多成分分子軌道法は直接温度効果を取込むことはできないが、水素原子核自身の量子効果を効率的に取込むことができる。本手法により、重水素置換による有効ポテンシャルの変化、骨格構造の変化、電子状態の変化を、理論的に解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、初年度に計画していた1.量子多成分系分子理論の大規模系への拡張と、2.水素結合型強誘電体における同位元素効果の分子論的起源の二量体クラスターモデルに対する具体的計算、を終了することができた。
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今後の研究の推進方策 |
大規模並列計算機環境で、具体的な大規模計算を実現する。量子多成分系分子理論手法を用いて重水素置換による物理量変化を探ることで、(A) プロトントンネリング、(B) 幾何学的同位元素効果、(C) 軽水素・重水素に属する電子数の違いを理論的に解析し、直接実験値と比較したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、昨年度中に並列計算機を購入して大規模計算を実施する予定であった。しかしながら本年度の量子多成分系分子理論の大規模計算システムを構築するのに、予想以上に時間がかかったため、並列計算機の購入を次年度に持ち越した。さらに具体的な大規模計算には、横浜市立大学学生にも協力いただくが、昨年度はそのような計算実施が少なかったため学生への協力謝金は支出しなかった。その分、本年度に学生謝金として支出予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
①並列計算機の購入と、具体的な大規模計算に際し横浜市立大学学生にも協力いただき、②学生への謝金として支出予定である。
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