研究課題/領域番号 |
26620016
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
根岸 雄一 東京理科大学, 理学部, 准教授 (20332182)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 金属クラスター / 魔法数 / 高速液体クロマトグラフィー / 精密分離 |
研究実績の概要 |
チオラート(SR)によって保護された金属クラスターは、他の有機分子によって保護された金属クラスターに比べて安定性が高いため、機能性材料の構成単位として高いポテンシャルを有している。なかでも、魔法数と呼ばれる、特異的安定性を有するクラスターは材料として高い可能性を秘めている。こうしたチオラート保護金属クラスターを高機能化させる手段として、配位子に様々な機能性有機分子を用いることが効果的である。しかしながら、配位子に複数種類の有機分子を用いた合成では、配位子の組成に分布が生じてしまう。クラスターの規則的配列や一次元連結などといった高次機能制御を実現するためには、得られた混合物を配位子の組成毎に高分解能で分離する技術が必要となる。私たちは最近、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)における逆相カラムと移動相置換(グラディエント)プログラムを組み合せることで、クラスターを配位子の組成毎に精密かつ系統的に分離することに成功した。本年度の研究では、分離に効果的な置換基の組み合わせについて検討を行い、分離における高分解能化のキーファクターの解明を目指した。具体的には、二成分チラート保護金属クラスター(PdAu24(SR1)18-n(SR2)n (n = 0~18))を合成し得られた混合物を逆相HPLCにより分離した。その結果、置換基の極性差が大きいほど一連のクラスターは高分解能で分離されること、分離に効果的な置換基の組み合わせは、PdAu24(SR1)18およびPdAu24(SR2)18の保持時間より見積もることが可能であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題研究では、チオラート保護金属クラスターに対する新たな高分解分離法を確立することを目的としている。本年度は、合金クラスターを配位子の組み合わせ毎に高分解能で分離する方法の確立を目指し、実際に高速液体クロマトグラフィーとグラディエントプログラムの複合による、汎用性の高い、高分解能な分離法の確立に成功した。さらに、こうした方法論の適用範囲についても明らかにした。このことから、現在までの達成度を「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
多くの気相研究から明らかにされているように、異種原子のドーピングは金属クラスターの安定性や物理/化学的性質に大きな影響を与える。申請者らのこれまでの研究より、魔法数Aun(SR)mクラスターについても、Pdをドープするとその安定性や表面反応性が著しく向上することが明らかになっている。魔法数クラスターに対する異原子ドープ効果を解明することは、安定で新しい機能を有する金属クラスターの創製に極めて重要である。しかし一部の系を除くと、現状技術でドープクラスターを精密合成することは極めて困難である。次年度の研究では、1)合金クラスターを「ドープ数毎に」高分解能で分離する新規方法論を確立する。また、得られた精密合金クラスターを調べることで、2)異原子ドープが魔法数クラスターの物理/化学的性質に与える影響を、「原子精度にて」明らかにする。3)これらの研究を通して、新規無機元素ブロック創製に対する新たな設計指針を打ち立てることを実現する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の研究計画を考慮すると、消耗品の購入に当初の予定よりも多額の金額がかかることが見込まれるため、物品費の一部を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、合金ナノクラスターを、金属コアの化学組成毎に高分解能で分離する方法を確立する。こうした分離を行う上で、いくつかの高速液体クロマトグラフィーカラムの使用が不可欠で有り、繰越予算はその購入費に充てる。
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