研究課題/領域番号 |
26620017
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
奥山 克彦 日本大学, 工学部, 教授 (10185556)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | トリチウム水 / 汚染水 / 界面振動数 / 対称伸縮振動 / 赤外レーザー励起 / 振動選択 / 逆対象伸縮振動 / 対称変角振動 |
研究実績の概要 |
平成26年度研究実施計画の[1]仮想汚染水の調整と試作セルの作成に関して、前者はAldrich社製とCambridge社製の重水(D2O)を購入し、学内調達の超純水を用いて完了している。後者の試作セル作成に関しては、27年3月に完成した。[2]分光測定装置の作成に関しては、現在(27年4月)行っている。こちらは計画からの遅れが生じている。26年度は一部計画を変更し、27年度以降に計画していた「THO含有水溶液の界面振動数測定」のFirst Trialを行っている。研究対象は前述の購入した重水である。これらの中には製造過程の特徴から、THOも濃縮され存在している。線量値を測定したところ、2003年製造のAldrich社製は785 Bq/Lで残量濃度は1.01×10-12 mol/L、1994年製のCambridge社製は145 Bq/Lで残留濃度は1.87×10-13 mol/Lであった。濃度はかなり低いが、赤外吸収法およびラマン散乱法を用いて、デジタル処理による差スペクトル法を最高水準まで引き上げ、対称伸縮振動領域~2000 cm-1付近、対称変角振動領域~1000 cm-1付近、逆対象伸縮振動領域~2200 cm-1付近を重点的に測定した。その結果、対称伸縮振動の痕跡をラマン分光法で捕まえることができた。確定はできていないが、2138 cm-1であった。さらなる確認実験は必要である。測定された振動数は量的な問題から水分子のひとつの水素原子がトリチウムに、他方が重水素に置換されたTDO分子のものであると考えられる。 今後、トリチウム試料や汚染水の入手は困難が予想されるので、重水(D2O)に含まれるトリチウム水TDOを研究対象に研究を遂行するつもりである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)トリチウムから発せられるガンマ線エネルギーが小さく、線量値の測定が困難であったこと。(2)トリチウム試料の入手が予想以上に困難であることが判明したこと、および予想通りではあったが汚染水そのものの入手も困難であることが判明したこと。(3)今回「挑戦的萌芽研究」に採択され研究を行っているが、この研究領域の国内研究者の数が、申請時に予想よりもかなり少ないことが判明したこと。それに伴い十分な情報交換ができていないこと。(4)大学内業務が増加し、申請時の予想よりも研究にあてがわれる時間が多くないことが判明したこと。
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今後の研究の推進方策 |
状況は「やや遅れている」ではあるが、27年度は大きな変更をすることなく、申請時の「研究実施計画」に従って研究を進めたい。変更点は対象物質(含トリチウム水)の入手方法を、「重水(D2O)に含まれるトリチウム水(TDO)とする」という部分である。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属大学の業務が、申請時の予想より増加したため、研究遂行は全体的にやや遅延している。それに伴い、平成26年度実施計画にあった試作セルの制作が年度末、27年3月になり、完成したものの資材購入の支払いが、年度をまたぎ27年4月、5月になってしまい、次年度使用額が発生している。この制作に係る支払いは5月までには完了するので、27年度の実施計画は大きな変更をすることはなく、遂行する考えである。
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次年度使用額の使用計画 |
上記のとおり「次年度使用額」は27年5月には使用される。平成27年度実施計画に大きな変更を予定していないので、「27年度使用額分」は予定通り消化されると考えられる。ただし、先にも記したように研究対象の調達方法を変更したのに伴い、若干の変更は発生すると考えられる。具体的には「重水の購入費」とそれを電気分解しトリチウム水を濃縮させるため、「低電圧高電流電源」の購入が必要である。この電源は50万円未満なので次項の購入物品には含まれない。
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