研究課題/領域番号 |
26620021
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
田中 真人 独立行政法人産業技術総合研究所, 分析計測標準研究部門, 主任研究員 (30386643)
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研究分担者 |
平 義隆 独立行政法人産業技術総合研究所, 分析計測標準研究部門, 研究員 (60635803)
黒田 隆之助 独立行政法人産業技術総合研究所, 分析計測標準研究部門, 主任研究員 (70350428)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 化学物理 / 加速器 / テラヘルツ/赤外材料・素子 / 計測工学 / 物性実験 |
研究実績の概要 |
本研究課題はテラヘルツ領域において円二色性や光学活性に代表される円偏光を用いた分析手法の構築を最終目的とするものである。本研究グループが開発してきた高強度テラヘルツ光源や高感度円二色性計測手法などの技術を駆使して、テラヘルツ領域における円二色性・光学活性スペクトル計測手法の構築やそのための重要な要素技術である偏光度計測手法や偏光光学素子開発・評価などを進めていく。 本年度は電子加速器をテラヘルツ光源として、主に重要な要素技術である円偏光発生と偏光度計測手法の確立を行い、特にコヒーレント遷移放射からのラジアル偏光に光学素子を挿入することにより発生する円偏光成分の二次元分布の観測を行うことに成功した。 光源として利用した当研究所所有のSバンド電子加速器は、ラジアル偏光と呼ばれる中心から放射状に直線偏光成分を有する偏光を発生できる。加速器からのラジアル偏光を中心帯域2THzのバンドパスフィルタで単色化し、位相子と直線偏光子を通過させた後、テラヘルツカメラを用いて強度の二次元分布を観測した。この時、位相子と直線偏光子それぞれの面内回転角度を変えた光強度の二次元分布を計測することで偏光度解析を行った。またそのための計測・解析プログラムを構築した。これにより、ラジアル偏光したテラヘルツ光の光強度、0°―90°直線偏光成分、45°―135°直線偏光成分、左右円偏光成分の3成分、すなわちStokesベクトルの二次元分布観測に成功した。さらに1/4波長板もしくは1/2波長板の挿入による偏光度の二次元分布の変化を観測した。特に1/4波長板挿入により左、右円偏光成分が発生すること、さらに角度変化によってその位置も変化することを観測した。またこれにより波長板が正確に動作していることも確認することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の基礎となる電子加速器からのテラヘルツ光の円偏光の発生・計測システムの開発に成功している。また本装置は次年度行う円二色性・光学活性計測システムとほぼ同様の光学系であり、これを発展させることで目的の達成が可能である。以上から概ね順調に研究目的を達成しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本年度の成果を発展させて、広帯域かつ高精度な偏光度観測システムをまず構築し、それを基にしてテラヘルツ領域の円二色性もしくは光学活性スペクトルの検出を目指す。これらより本研究目的を達成させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は基礎となる加速器の偏光度解析システムの開発・評価を中心とした研究を進め、次年度にシステムの高度化とそれによる円二色性・光学活性の検出に集中的に予算投資を行うことで、効率的な研究開発と成果発表を行うように努めた状況において次年度の研究費は生じたものである。また加速器運転時間の制約などから、単一波長に留まった偏光度観測を次年度は広域において行う予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
引き継いだ次年度研究費は主に計測システム高度化のための光学部品、機器類の購入と、他波長に対応した光学素子の購入・開発、成果発表に充てる。
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