研究実績の概要 |
本研究の目的は1,4-シクロヘキサシラニレン基をもつヘキサシラベンゼンを合成し、その構造や性質を解明することである。このヘキサシラベンゼンの合成法としては、2,2,3,3-テトラクロロデカメチルビシクロ[2.2.2]オクタシランを前駆体とし、これをアルカリ金属で還元して三量化する方法を考えた。平成26年度は以下のようにこの前駆体の合成を行った。 テトラキス(トリメチルシリル)シランをカリウムtert-ブトキシドでシリルカリウムとし、1,2-ジクロロテトラメチルジシランと反応させて、2,2,5,5-テトラキス(トリメチルシリル)デカメチルヘキサシランを合成した。この化合物を2当量のカリウムtert-ブトキシドでシリルジカリウムとし、1,2-ジクロロテトラメチルジシランと反応させて、オクタメチル-1,1,4,4-テトラキス(トリメチルシリル)シクロヘキサシランを合成した。この化合物を2当量のカリウムtert-ブトキシドでシリルジカリウムとし、硫酸ジメチルと反応させて、デカメチル-1,4-ビス(トリメチルシリル)シクロヘキサシランを合成した。この化合物に2当量のカリウムtert-ブトキシドを反応させ、硫酸ジメチルを加えるとドデカメチルシクロヘキサシランが生成することから、この反応では、デカメチル-1,4-ジポタシオシクロヘキサシランが生成していることが確認された。 今後はこの化合物を用いてビシクロ[2.2.2]オクタシラン骨格を形成し、2,2,3,3-テトラクロロデカメチルビシクロ[2.2.2]オクタシランを合成する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1,4-シクロヘキサシラニレン基をもつヘキサシラベンゼンを合成するための前駆体として、2,2,3,3-テトラクロロデカメチルビシクロ[2.2.2]オクタシランの合成を行っている。この前駆体を6段階で合成する予定である。最初の4段階の合成を終え、現在、5段階目の反応条件の検討を行っている。この反応ではデカメチル-1,4-ジポタシオシクロヘキサシランが生成することがポイントになるが、硫酸ジメチルを加えるとドデカメチルシクロヘキサシランが生成することから、デカメチル-1,4-ジポタシオシクロヘキサシランが生成していることが確認された。残りはあと1.5段階であり、合成スキームの各段階の困難さを考えると、比較的順調に進んでいると言ってよいのではないか。
|
今後の研究の推進方策 |
合成したデカメチル-1,4-ジポタシオシクロヘキサシランを1,2-ジトリフラートジシランと反応させて、デカメチルテトラヒドロビシクロ[2.2.2]オクタシランを合成する。次にケイ素上の水素原子を塩素化して、2,2,3,3-テトラクロロデカメチルビシクロ[2.2.2]オクタシランを合成する。これを前駆体としてアルカリ金属で還元して三量化させ、ヘキサシラベンゼンを合成する。合成したヘキサシラベンゼンの構造はX線結晶構造解析で決定する。ヘキサシラベンゼンの芳香族性は29Si NMRによって調べる。また、紫外可視吸収スペクトルと理論計算によって、電子状態を明らかにする。また、ヘキサシラベンゼンの酸化、還元、熱反応、光反応、種々の試薬との反応を調べる。
|