研究課題/領域番号 |
26620025
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
後藤 敬 東京工業大学, 理学院, 教授 (70262144)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超分子化学 / ロタキサン / セレネニルスルフィド / 動的共有結合 / 高配位ケイ素化合物 |
研究実績の概要 |
ポリロタキサンは、主鎖が超分子的に連結された「トポロジカル高分子」として注目を集めている。各ユニットは共有結合ではつながっていないが、いずれかの共有結合を切断しなければ解離しないため、速度論的に安定な1個の分子と見なすことができる。しかし、明確な構造をもつポリロタキサンを逐次的に合成する手法はこれまで確立されていなかった。本研究では、高周期典型元素化合物の特徴的な反応性を活用することで、明確な構造と単一の組成をもつ「トポロジカル精密巨大分子」を逐次的に合成する手法の開発を目的とし、検討を行った。前年度までに、高配位ヒドロシランの特性を活用した独自のエンドキャッピング法を開発し、従来の手法では中から低収率でしか合成できなかった中性ドナー・アクセプター型ロタキサンの高収率での合成を達成した。これら高配位ケイ素化合物を用いた手法に加え、ロタキサンを穏和な条件で合成する新規な手法として、今年度、セレネニルスルフィド結合を動的共有結合として活用したエンタリング法の開発についても検討した。以前に我々は、セレン-硫黄結合をもつセレネニルスルフィドがチオール存在下、セレン上で選択的に交換反応を示すことを明らかにしている。この性質を活かし、セレネニルスルフィドを動的共有結合として用いることで、非対称構造をもつロタキサンを選択的に合成することに成功した。すなわち、軸上にアンモニウム部位とセレネニルスルフィド部位をもち、セレン上にかさ高い置換基を有するダンベル状分子と環状分子を混合し、触媒量のチオールとトリエチルアミンを添加したところ、室温下で環状分子のエンタリングが効率よく進行し、対応するロタキサンが90%以上の高収率で得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非常に温和な条件下でのロタキサン合成法として、セレネニルスルフィド結合を活用したエンタリング法という従来全く例のない新規な手法を開発することに成功した。高配位ケイ素化合物を用いる手法と合わせ、高周期ヘテロ元素の特性を活用した独自性の高いトポロジカル分子構築法を創出できており、順調な進捗状況といえる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの検討結果に基づき、中性アミド-クラウンエーテル型ロタキサンを基本モチーフとして、エンドキャッピングユニットを連結した環状分子を合成し、配列情報をもつトポロジカル精密巨大分子の逐次的合成について検討する。また、セレネニルスルフィド結合の動的特性に基づくエンタリング法の活用により、複数種の外部刺激に応答する高次機能分子スイッチの開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の研究において、新たな手法であるセレネニルスルフィドの特性に基づくエンタリング法について詳細に検討するため、種々の条件下でのパイロット実験を行った。そのため、小スケールの実験が多くなり、使用する試薬の量が当初の予定より少なく抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、前年度までの検討結果に基づきトポロジカル精密巨大分子合成開発の取りまとめを行う予定であり、試薬の購入およびガラス器具の購入の費用に充てる。
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