研究実績の概要 |
環状4π電子系化合物であるボロールは、反芳香族性への興味に加え、高い電子受容性やルイス酸性を示すことから機能性分子の観点からも盛んに研究されている。一方、ボロールの高周期類縁体であるアルモールに関しては、合成例がほとんど無く物性や反応性は明らかにされていなかった。本研究では、アルミニウム上にハロゲン置換基を持つ高反応性化学種であるハロアルモールの合成と性質解明を目的とした。 本年度の研究では、アルミニウム上にクロロまたはブロモ基を導入した1-ハロゲノアルモールの合成・単離に成功した。これらのハロゲン置換アルモールは、結晶中ではブタジエン部位の炭素原子が2つのアルミニウム原子間を架橋した二量体構造をとっていたが、溶液中では単量体との解離平衡が存在することが、温度可変NMRスペクトルおよびルイス塩基との錯形成から示唆された。1-ブロモアルモールに対し種々の求核剤を作用させ、アルミニウム上での置換反応を検討したところ、かさ高い求核剤である2,4,6-tri-tert-butylphenyllithiumや(Me3Si)2NLiとの反応において、アルミニウム上に置換基が導入されたアルモール誘導体が得られた。また、1-ブロモアルモールとアルキン類との反応を行ったところ、Al-C結合への二分子のアルキンの挿入が進行し、含アルミニウム9員環化合物である1-alumacyclonona-2,4,6,8-tetraene (1-brumoalumonin)誘導体が生成した。
|