研究課題/領域番号 |
26620032
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
内田 竜也 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (50380564)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 不斉アミノ化 / ナイトレン / C-H活性化 / ルテニウム / 触媒反応 |
研究実績の概要 |
光学活性な含窒素有機化合物の多くは、特異な生理活性を示し、その活性は、炭素ー窒素結合の立体化学に起因している。そこで、簡便かつ効果的に炭素―窒素結合を高立体選択的に構築する手法の開発が必要である。 有機化合物中に最も豊富に存在する炭素―水素(C-H)結合を高度な選択性にて位置および立体選択的にアミノ化することが可能となれば最も簡便かつ直裁的な光学活性な含窒素化合物の合成法となる。研究代表者らは、アジド化合物を窒素化剤とする初めての高位置、高エナンチオ選択的C-Hアミノ化を達成している。 同反応は、本研究によるラジカルクッロを用いた反応機構に関する検討、および速度論的同位体効果に関する検討から同反応は、ルテニウム触媒とアジド化合物から生じる反応活性種(ルテニウム-ナイトレノイド種)が水素原子を引き抜き、生成したラジカル種が再結合し、炭素-窒素結合は生成する段階的機構で進行することを明らかにした。 また、本反応は炭素-重水素(C-D)結合とC-H結合の結合エネルギー差を高度に区別しており、この選択性を利用し、初めて触媒的に水素/重水素からなる同位体性キラル分子を良好な選択性にて分割することに成功した。 さらに、今回、水素/重水素からなる同位体性キラル分子の本アミノ化による速度論的光学分割の検討を進め、ベンジル位、およびアリル位の同位体性不斉中心を高選択的に分割できることを明らかにした(krel = up to 14)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ルテニウム錯体が触媒するアジド化合物を窒素化剤とする炭素-水素結合のアミノ化の反応機構の解明について、ラジカルクロックを用いた検討、および速度論的同位体効果の検討から本アミノ化が、1)反応活性種(ルテニウム-ナイトレノイド種)が、炭素-水素結合から水素原子を引き抜き、2)生成したラジカル種が再結合し、炭素-窒素結合を構築する段階的機構を明らかにした。 さらに、反応機構の知見を共に、水素/重水素からなる同位体性キラル分子の本アミノ化による速度論的光学分割の検討を開始し、ベンジル位、およびアリル位の同位体性不斉中心を世界に先駆けて高選択的に分割できることを明らかにした(krel = up to 14)。
これらの成果から、本研究は概ね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
水素/重水素からなる同位体性キラル分子は、重水素原子によってラベルされた化合物は、元の水素原子からなる化合物と物理的にも化学的にもほとんど性質が変わらない極めて重要な標識化合物である。しかし、これまで同位体性キラル分子を優れた光学純度で精製する手法は、存在していない。そこで、本研究で見出された同位体性キラル分子の速度論的分割にてより高効率を目指し、ルテニウム触媒の改良を図り、光学的に純粋な同位体性キラル分子を得る手法の確立を行う。
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