研究課題/領域番号 |
26620033
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
久保 由治 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (80186444)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | フォトンアップコンバージョン / ゲル / ボロン酸 / 近赤外線吸収色素 |
研究実績の概要 |
低強度かつ非コヒーレントな入射光でも達成される三重項-三重項消滅型フォトンアップコンバージョン(TTA-UC)は太陽光を有効利用できる手段として太陽電池への適用が期待されている。今年度は以下の項目について検討した。 1) ゲルマトリックス中でのTTA-UCの発現と評価:安定な励起三重項状態をもつ増感剤と発光剤を組み合わせる必要から,低酸素条件下,色素間の会合を避けながら高い拡散性を達成させなければならず,流動性の低いゲルの利用はその効率を下げる,一方,ゲルは意匠性があるというメリットがある。本研究では,ポリビニルアルコール(PVA)にベンゼン-1,4-ジボロン酸を架橋させることで容易に調製されるボロネートゲルのOH基に着目し,発光剤をグラフトさせたゲルでのUC特性を調査した。まず,フェニルボロン酸アンカー部位をもつジフェニルアントラセン(DPA-BA)を新規に合成し,除酸素したDMSO中にPt(II)オクタエチルポルフィリン(PtOEP)との共存下,小型レーザーモジュールを装備した蛍光分光光度計で測定をおこなった。その結果,本系のアップコンバージョン量子収率の閾値Ithが4.3 mW cm-2と算出され,われわれの評価系で精度の高いデータがとれることがわかった。また,DPAをグラフトしたボロネートゲルが調製され、PtOEPをドープさせることで6.8%(30.5 mW cm-2) のアップコンバージョン量子収率を得た。 2) 近赤外線吸収色素の合成:色価が高く光安定性に優れた長波長吸収色素の提案は本課題の重要な課題である。ジピロメテンホウ素錯体(BODIPY)をコアにπ共役を拡張させた近赤外線吸収色素を合成した。また,セレノフェンを導入した類縁体について,その重原子効果により一重項酸素の発生が示唆され,励起三重項状態をとり得る可能性が見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
小型レーザ―モジュールを装備したフォトンアップコンバージョン評価系を構築することに時間がかかったが,ようやく信頼性のあるデータが取れるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
通気条件下で,フォトンアップコンバージョン特性が維持できるゲル系の提案をおこなう。また可能性のある増感剤や新規近赤外線吸収色素の合成提案をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
小型レーザーモジュールを装備したフォトンアップコンバージョン評価装置のセットアップに時間がかかり,研究が少し遅れているため。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬品の購入にあてる。
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