研究課題/領域番号 |
26620035
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
河合 英敏 東京理科大学, 理学部, 准教授 (50322798)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 水素結合 / アミド / キラル / 多孔性結晶 / 配座キラリティー / 螺旋構造 / ビナフチル |
研究実績の概要 |
2つの第1級アミド基を有する縮環マロナミドは、1分子あたり8本の水素結合形成により強固な2次元シート構造を形成することを明らかにしてきている。本研究では、キラル骨格を有する縮環マロナミド誘導体を設計・合成することで、2つのアミド基からなるアミド配座キラリティーに優先性をもたらし、その結果、制限された方向性を持つ分子間多重水素結合により、ゲスト包接が可能な次元制御型キラル構造体を構築すること、ならびに、形成される集合体の応用性を開拓することを目的としている。 平成27年度は、キラルな縮環構造を有する縮環マロナミドとして、前年度に親水性および疎水性空孔が形成されたビナフチル骨格に集中した研究を行い、新たにビナフチル骨格の3,3'-位の置換基Rが異なる3種の誘導体(R=MeO, Ph, Naphthyl)を合成し、主に固相中での集合様式およびアミド配座キラリティーの優先性を調査した。 合成したビナフチル縮環体はいずれも溶媒を取り込んだ包接結晶を形成した。置換基の嵩高さが集合様式およびアミド配座キラリティーの誘起に影響を与えることがわかった。 先に明らかにしたR=Hの場合では、二次元シート構造を形成したもののアミド配座キラリティーは固相中で33%eeだった。MeO体では、半環状の集合体が2次元的に連結した矩形波状のシート構造を形成し、配座キラリティーは50%eeとなった。Ph体では、どの分子も同じ配座キラリティー(100%ee)を示し、水分子を水素結合ネットワークに組み込みながら一次元螺旋構造を形成し、その螺旋の溝に位置するアミドNH基に水素結合するように溶媒が取り込まれることを見出した。最終年度はこれらのキラル集合体に基づく機能性の開拓に取り組む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キラルな母骨格の構造修飾により、アミド基の配座キラリティーに影響を与えられることが明らかとなり、さらにそれが集合形態の制御に繋がるなど、構造設計の指針が明らかになってきたため。
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今後の研究の推進方策 |
ビナフチル縮環体では、いずれの場合においてもゲスト包接が可能であり、さらにネットワーク形成に用いられない一部のアミドNH部が、ゲスト分子との水素結合に使われることから、この部位を用いた不斉認識や触媒機能などへの応用を検討していく予定である。 一方、溶液中でのアミド配座キラリティーの誘起に関しては、低温NMRなどを検証したが、シグナルの分裂は見られず、R/Sの交換が速い、もしくは、すでに一方に偏っているのか判別することはできなかった。固相としての応用だけでなく溶液中での触媒特性も調査することで、配座キラリティーの効果を検証していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬を他の研究費と合算購入しようとしたものの、購入金額の半額以上のものにしか用いることができないという規則により購入できず、結果的に残額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の予算へと繰り越すことで、前年度に購入できなかった試薬などの購入に充てる予定である。
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