研究実績の概要 |
H28年度は縮環マロナミド構造を用いた次元制御構造の構築に関する以下の4つの研究を実施した。 1. アミド配座キラリティーの制御によるキラル空孔の創出。3,3'位に様々な置換基を有するキラルなビナフチル骨格で縮環したマロナミド体を合成し、その結晶構造の解析からマロナミド部への配座キラリティーの誘起の程度およびキラル空孔へのゲスト包接を検討した。Ph基などの嵩高い基を導入することで結晶中で一方の配座キラリティーに偏らせることに成功した。Ph置換体は結晶構造中で螺旋構造を形成し、水およびアセトンなどのカルボニル基を水素結合によって取り込むことがわかった。このキラル空孔を有する結晶は不飽和ケトンへのアミンのMichael付加を触媒することを見出した。 2. マロナミド構造をπ骨格で架橋したピラードレイヤー型多孔性構造の構築。先に合成した2つもしくは3つのマロナミド部をベンゼン環やナフタレン環で縮環型に架橋した誘導体におけるゲスト吸脱着能をXRD,TG-DTA,比表面積測定などにより評価した。ベンゼン縮環体はDMSOの可逆な吸脱着が可能であること明らかにした。これらの水素結合性多孔質構造は水やDMSOなどの高極性溶媒中でも難溶な状態として利用できることから新たな多孔質材料としての応用が期待される。 3. スルチン体を利用したπ共役拡張型縮環マロナミドの構築。ジエン前駆体として用いられるスルチン構造を有する縮環マロナミド前駆体を新たに合成し、DMADやキノン類、フラーレンとのDiels-Alder反応を行い、π平面が拡張された縮環マロナミドの合成に成功した。今後、これらマロナミド体を用いたπ平面の規則配列化を検討する。 4. 水素結合性ネットチューブの発見。上記の検討の過程で、マロナミド部が8本の水素結合により筒状に集合化し、内部に水を取り込んだチューブ状構造を形成する誘導体を見出した。
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