研究課題
o-フェニレンジアミンを配位子とするNi(II)錯体をテンプレートとして、塩化ジエチルマロナトを反応させて、ワンポットで大環状テトラアミド配位子(H4DTTM)を合成した。強塩基存在下でH4DTTMをFeCl2と反応させて錯形成を行い、その後空気酸化することにによって、中間スピン状態の(NEt4)2[Fe(III)(DTTM)Cl] (1)を合成した。その結晶構造を決定すると共に、各種分光法によるキャラクタリゼーションを行った。また、錯体1は、アセトニトリル中で、2段階の可逆な酸化還元過程を示すことを明らかにした。次に、錯体1をトリス(p-ブロモフェニル)アミニルラジカル及び[Ru(bpy)3]3+ (bpy = 2,2’-ビピリジン)を酸化剤として逐次的に化学酸化し、吸収スペクトル測定によりその酸化過程を追跡し、異なる等吸収点を示す2段階のスペクトル変化を観測した。さらに、化学的酸化により得られた錯体1の1電子酸化体と2電子酸化体の単離と結晶構造決定にも成功した。これらの錯体の電子構造を温度可変ESR及びメスバウアースペクトル測定、磁化率測定により検討した。1電子酸化体の電子構造については、三重項(S = 1)の状態にあることが10 KにおけるESR測定により示唆された。2電子酸化体については、DTTM(4-)配位子の1つのフェニレンジアミド部位が1電子酸化された4重項のFe(IV)-DTTM(・3-)状態と、DTTM(4-)配位子の2つのフェニレンジアミド部位がそれぞれ1電子酸化された2重項のFe(III)-DTTM(・2-)状態の間で、温度に依存した原子価互変異性が発現することがわかった。すなわち、DTTM(4-)配位子は、redox-non-innocentな性質を示し、金属中心との協同効果に基づいて、興味深い電子状態を創出する場を提供しうることが明らかになった。
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