28年度は前年度の研究で合成した 、白金―パラジウム異種金属二核錯体を用いて、白金を中心に含むPtPd3Si3型の新規の平面四核錯体の合成に成功した。この錯体の白金―ケイ素結合は短く、単核のシリレン白金錯体よりもわずかに長い程度であった。一方でNMRにおけるSi-H結合定数もシリレン白金錯体に近い値を示した。これら二つのパラメーターについて、白金―シリレン、白金ジシリル錯体、パラジウム-シリレン錯体、パラジウムシリル錯体等の多彩な白金、パラジウム錯体と比較したところ、金属=ケイ素二重結合に近い性質を有していることが明らかになった。 一方で、白金―ケイ素結合に対する小分子の付加はおこらず、ルイス酸であるヨウ化銅の付加反応は白金―パラジウム結合におこることがわかった。これらからわかることとして、白金―ケイ素結合はシリレン錯体と同様に二重結合性を有する一方で、反応性は著しく低く、むしろ平面四核錯体を強く安定化していることがわかった。 これらの成果を前年度までの成果と合わせて本研究全体においては、以下の結果が得られた。パラジウム二核錯体、パラジウム―白金異種金属二核錯体のいずれからも平面四核錯体を温和な条件下で得ることができた。これは速度論的な支配によって得られたものであり、有機ケイ素配位子が遷移金属によって簡単に活性化されることが理由として挙げられる。このような複核錯体合成反応によって、通常合成が極めて困難な平面複核遷移金属錯体が得られた、一方でこのような平衡反応を用いて、原料錯体の比率により生成物を制御する錯体合成法は極めて新規性が高い。
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