研究課題/領域番号 |
26620042
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
尾関 智二 日本大学, 文理学部, 教授 (60214136)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 複合クラスター / ポリオキソメタレート |
研究実績の概要 |
本研究はエチニル銀クラスターとポリ酸とが直接接合した複合クラスターを合成し、構造制御に基づき複合クラスターの光学的性質を制御するものである。今年度は非対称ポリ酸[P2W15Nb3O62]9-を前駆体として得られる複合クラスター[Ag25{CCC(CH3)3}16(CH3CN)4(P2W15Nb3O62)]について、単結晶X線構造解析、31P NMR測定、エレクトロスプレー質量分析および超遠心分析の実験結果を総合して、構造及び生成機構を解明した研究を完成させ、その成果がInorganic Chemistryに論文が掲載された。 また、類似前駆体である[P2W15V3O62]9-の合成に成功し、これについてもエチニル銀クラスターとの反応過程を、吸光度変化を利用して追跡することに成功した。その結果、[P2W15V3O62]9-は少なくとも二段階の反応を経てエチニル銀クラスターと反応していることが明らかになった。これは、超遠心分析により明らかにした[Ag25{CCC(CH3)3}16(CH3CN)4(P2W15Nb3O62)]の生成機構と整合する結果であり、吸光度測定により生成過程を追跡するという手法の妥当性が示された。 さらに、5族元素のポリ酸である[Nb6O19]8-および15族元素の酸素酸である[PO4]3-についても、吸光度変化によりエチニル銀クラスターとの反応過程を追跡した。その結果、[Nb6O19]8-は少なくとも三種の、[PO4]3-は少なくとも二種の化合物を作ることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非対称ポリ酸[P2W15Nb3O62]9-を前駆体として得られる複合クラスター[Ag25{CCC(CH3)3}16(CH3CN)4(P2W15Nb3O62)]の構造及び生成機構を解明した研究成果をInorganic Chemistryに発表できたことは、着実な成果であると考えられる。 また、[P2W15V3O62]9-、[Nb6O19]8-および[PO4]3-のエチニル銀クラスターとの反応過程を、吸光度変化を測定することにより追跡できることを示したことは、今後の新化合物合成の指針を与える成果である。ただし、これらを結晶化することに至っていないことが今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
[P2W15V3O62]9-を前駆体としたエチニル銀クラスターとの複合クラスターを、吸光度測定により示唆された中間体も含めて結晶化し、構造を明らかにすることをめざす。また、同族の[P2W15Ta3O62]9-を用いて同様の実験を行う。さらに、得られた化合物について発光特性の測定を行う。なお、平成26年度に当研究室に蛍光光度計が配置され、室温および液体窒素温度で発光特性を測定する環境が整っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、トルフルオロメタンスルホン酸銀(50gが32,000円)など、高価な試薬を使用する。年度末の残額が19,703円であり、その購入には不足していた。残額をそれ以外の試薬などの購入に充てるよりは、次年度に繰り越して高額試薬購入に充てることが、研究目的達成により多く貢献すると考え、次年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
トルフルオロメタンスルホン酸銀(50gが32,000円)などの試薬の購入費用に充てる。
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