本研究はエチニル銀クラスターとポリ酸とが直接接合した複合クラスターを合成し、構造制御に基づき複合クラスターの光学的性質を制御するものである。 非対称ポリ酸[P2W15Nb3O62]9-を前駆体として得られる複合クラスター[Ag25{CCC(CH3)3}16(CH3CN)4(P2W15Nb3O62)]について、単結晶X線構造解析、31P NMR測定、エレクトロスプレー質量分析および超遠心分析の実験結果を総合して、構造及び生成機構を解明した昨年度に引き続き、今年度は非対称ポリ酸[SiW9Nb3O40]7-を前駆体として得られる複合クラスター[Ag42(CO3){CCC(CH3)3}27 (SiW9Nb3O40)]-について、単結晶X線構造解析、一次元及び二次元の1Hおよび13C NMR測定、29Si および183W NMR測定の結果を総合して、結晶及び溶液構造を解明した研究を完成させ、その成果をDalton Transaction誌に論文投稿した。当該論文は非常に高く評価され、同誌44巻44号の表紙を飾った。 また、類縁前駆体である[H2W12O40]6-および15族元素の酸素酸である[PO4]3-についても、エチニル銀クラスターとの複合クラスターの合成を試みた。得られた結晶のX線構造解析の結果、[H2W12O40]6-については一種の、[PO4]3-については二種の複合クラスターが生成していることが明らかになった。
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