研究課題/領域番号 |
26620043
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
邨次 智 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (20545719)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 白金 / ナノクラスター / カーボン担体 / カーボンナノチューブ / 固定化 / 触媒 / 触媒ポケット / 安定化 |
研究実績の概要 |
本年度は、カーボン担体に固定化した白金ナノクラスター触媒の周囲に、有機ポリマーの壁から成る「触媒ポケット」を設けることで、触媒反応時に高い安定性、耐久性発現が期待できるカーボン担体固定化白金ナノクラスター触媒の調製を目指した。まず、カーボン担体に固定化が可能であるピレンを、カルボキシレート配位子の置換反応を利用して4個導入した新規白金4核錯体を合成した。続いて、白金4核錯体をカーボン担体への固定化能を検討した。比表面積が比較的大きく (200 m2g-1)、分散固定化が可能な多層カーボンナノチューブ(MWCNT, 直径6-9 nm, 長さ5 mm)を用い、超音波分散時間は一定とし、固定化時間、固定化白金量を変化させたところ、最大で約2 wt%の白金が載ることが分かった。また、Pt LIII端EXAFSより固定化後も白金4核構造は維持されていることが分かった。さらに、有機ポリマーとして導電性を有するポリピロールを、白金4核錯体を固定化したMWCNT表面上に重合した。XRFによる固定化白金量重量減少によりポリピロール積層量を見積もったと共に、TGAより、ポリピロールの存在が確認された。最後に、加熱水素還元により白金ナノクラスターへの変換を行った。BETによる比表面積測定より、カーボンナノチューブの比表面積は殆ど変化していないことが分かった。TEMからは平均粒径が約1nmの微小なナノクラスターが得られたことが分かった。ポリピロールを積層しない場合の対照実験ではより粒径の大きなナノクラスターの存在が確認されたことから、ポリピロール積層は調製段階でナノクラスターの粒径制御に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、カーボン担体に固定化した白金ナノクラスター触媒の周囲に、有機ポリマーの壁から成る「触媒ポケット」を設けた新規カーボン担体固定化白金ナノクラスター触媒の調製を行うところまでを主眼としており、概ね達成できたと考えている。触媒反応活性評価を行う準備も並行して進めていたため、平成27年度が開始し次第すぐに実験を開始することができる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、「触媒ポケット」を設けた新規カーボン担体固定化白金ナノクラスター触媒を用いた触媒反応特性評価、電極固定化と酸素還元反応評価を行う。有機ポリマーを積層していない触媒と比較を行うことで、触媒安定性、耐久性に対する「触媒ポケット」の評価を行う。また、「触媒ポケット」の「出来具合」について、種々の構造解析を並行して進めていきたいと考えている。さらに、白金ナノクラスター触媒の触媒反応時におけるin-situ構造解析を行うことで、白金ナノクラスター上の反応基質、触媒自身の反応活性種、および劣化過程についての情報を得、カーボンの壁による「触媒ポケット」による白金ナノクラスターの孤立化、安定化効果を解明することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、白金4核錯体をカーボン担体への固定化特性の検討、有機ポリマー積層特性の検討、及び真空加熱還元によるナノクラスター化の検討を重点的に進めたため、触媒反応検討の中で、燃料電池電極触媒反応の検討を行うことができなかった。このため、電極触媒反応活性評価に使用する回転リング電極の購入を行わなかったため、余剰額分を平成27年度へ繰越を行った。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、「触媒ポケット」を設けた新規カーボン担体固定化白金ナノクラスター触媒を用いた触媒反応特性評価に関わる物品、特に、燃料電池電極触媒活性評価を行うための回転リング電極一式と触媒の電極固定化に必要な恒温炉を購入する。さらに、選択酸化反応、還元反応を行うための常圧、高圧反応容器を購入するとともに、生成物の分析に用いるキャピラリーGCカラムを購入する。触媒構造解析に必要なXAFSセルについても新規に設計、製作する。その他、触媒調製、反応実験に必要な試薬類、高純度ガス、ガラス、一般実験器具を購入する。高分解TEM測定使用料、放射光施設使用料、及び国際、国内学会における成果発表のための旅費が必要である。
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