研究課題/領域番号 |
26620044
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 隆文 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80650639)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 鉄一価 / 低原子価 / 高圧 / 電荷移動 / 平面四配位 |
研究実績の概要 |
本研究は、これまでにない一価の鉄を有する酸化物の合成と物性解明を目指し、低温トポケミカル還元反応を駆使して鉄酸化物の合成を行うこと、また高圧下での測定を行うものである。初年度であるH26年度には、以下の成果が得られた。(1)電荷移動転移を起こすことが高圧のXAS測定により分かっていた(Sr0.7Eu0.3)FeO2について、高圧下でのメスバウア分光測定を行った。その結果、XAS測定で得られた転移圧力と同じ圧力において、電荷移動転移(とそれに伴ってスピン転移)が観測された。高圧下でのスピン転移はSrFeO2において報告されているが、Eu置換によりその圧力を半分以上下げることに成功した。また重要なことは、メスバウアスペクトルより観測された内部磁場の大きさ、アイソマーシフトの値から鉄が一価の方向に還元されていることの証拠を強めることができた。(2)磁場中のメスバウア分光測定より、(Sr0.7Eu0.3)FeO2の高圧相が高温(340K)で強磁性、低温で反強磁性となることが明らかとなった。これはドープされていないSrFeO2にはない現象であり、また強磁性から反強磁性という非常に劇的な物性の変化という点で興味深い。(3)基盤の圧力効果を期待して、MgO基板上に(Sr0.7Eu0.3)FeO2の単結晶基盤を合成して、その電気抵抗を測定したが、電荷移動転移で期待される電気伝導性の大きな変化は観測されなかった。現在高圧電荷移動転移に関する論文を準備中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載したように、(1)メスバウアスペクトルより(Sr0.7Eu0.3)FeO2の鉄の状態をダイレクトに観察し、鉄一価が実現している証拠を強めた、またスピン転移圧を下げることに成功した、(2)磁場中での実験により、特異な磁気転移現象を観測した、(3)薄膜による圧力効果を期待したが、あまりうまくいかなかった、といった結果が出ている。常圧下での鉄一価の実現は今のところうまくいっていないが、着実に高圧下での物性解明が進んでおり、おおむね順調に研究が進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後高圧下での電気抵抗測定や構造解析を行っていく予定であるが、論文完成に向けて研究を詰めていく。また常圧下での鉄一価実現に向けて、圧力効果が考えられる物質について合成を精力的に行っていく。
|