本研究では、光・熱によって、イオン液体と配位高分子の間で可逆な相互転換を起こす物質を実現した。アレーン環を配位子とするサンドイッチ型ルテニウム錯体は、アセトニトリル溶液中で光照射すると、配位子が解離し、アセトニトリルが配位した錯体を生成することが知られている。この機構をヒントとして、シアノアルキル基を複数導入したアレーン環を持つサンドイッチ型ルテニウム錯体を設計し、この錯体にフッ素系アニオンを組み合わせたイオン液体を合成した。このイオン液体を石英板にはさんで紫外光を照射すると、徐々にフィルム状の黄色固体に転換した。ここでは、紫外光によってアレーン配位子が解離した後、配位子のシアノアルキル基部分がルテニウム間を架橋することによって、アモルファス配位高分子が生じている。さらに、この固体を加熱すると、アレーン配位子が再びルテニウムに配位し、完全に元のイオン液体に戻った。このように、光と熱による可逆な固液転換が実現した。さらに、これらのイオン液体と配位高分子は、同じ出発原料から、反応条件に応じて作り分けできることを見出し、前者が熱力学的、後者が速度論的な生成物であることを明らかにした。こうして光・熱による新たな固液転換の原理を立証した。この反応は、分子間・分子内の結合様式の劇的な転換を伴っている。本成果は、分子性液体と配位高分子という、全く異なる結合様式を持つ物質の間の転換を実現した点で重要である。
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